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[SVC50-10] 2011年霧島火山の噴火に伴って発生した火山性微動の時空間的特徴
キーワード:火山性微動, 新燃岳
火山性微動はマグマだまりから火口に至る浅部のマグマ供給系において発生すると考えられている震動であり,これらはマグマの存在位置や火道の状態を推定するうえで重要な情報を含んでいる.したがって,発生源の位置,震動特性を把握することがマグマ供給系のモデル化,活動の状態,推移を考える上で極めて重要である.そこで本研究ではこれらのモデル化を目指し,地震学的な観測データを用いて微動の特性についての把握を試みた.2011年1月から開始した霧島山・新燃岳の噴火では,噴火活動にともない,活発な地震・微動活動が観測された.そこで,この噴火で発生した微動の特性を明らかにして,火山活動との関連性を探ることを目的とする.霧島山・新燃岳は2011年1月から活発な噴火活動が始まった.九州大学では噴火直後の1月28日に,新燃岳火口から南西に約3km離れた新湯温泉周辺に25台の地震計(Matsumoto et al., 2013)と1台の広帯域地震計,大浪池登山口に1台の広帯域地震計を設置し地震観測を開始した.また,名古屋大学は2月1日に火口から北東方向に約5km離れた夷守台に16点の地震計を設置し(Nakamichi et al., 2013),同時に2つの地震計アレイでデータを収録した.先行研究ではそれぞれのアレイ観測点で収録されたデータを別々に解析しているが,本研究では両方の地震計アレイのデータを用いて微動の発生位置を推定する.また,霧島山周辺には東京大学,気象庁,防災科研によっても地震観測点が展開されている.これらの臨時観測点で収録された波形の振幅情報を用いて,地震計アレイ解析の結果と比較することで微動の発生メカニズムの推定を試みた. 2011年2月2日,3日には振幅の大きな微動が観測され,このうち2月2日20時43分から約40分間継続した微動が最も長く顕著であった.解析ではこの40分間の微動データを扱った.微動の周波数成分は約1,2,3,4Hzにピークをもち,このうち最も振幅の高かった1.5Hz-2.5Hz帯に狭帯域フィルターをかけ解析に用いた.微動データにMUSICスペクトラム解析(Schmidt, 1986; Goldstein and Archuleta, 1991)を適用し,微動の到来方向とスローネスの時間変化を調べた.均質な地震波速度構造を仮定し得られた微動のスローネスから微動源の空間尤度分布を求めた.解析の結果,微動の到来方向から微動の大部分は新燃岳火口方向から到来していたが,常に一定ではなく到来方向やスローネスには時間変化が見られた.スローネスが大きく表面波と思われる微動の発生源は新燃岳火口周辺に推定され,比較的長い継続時間を持っていた.また,火口浅部に発生源が推定された実体波と思われる微動も存在した.さらに,短い継続時間ではあるが火口から北西に約3km離れた大浪池周辺にも微動源が推定された.この微動源はMatsumoto et al.(2013)でも指摘されており,地殻変動から推定されている圧力源の方向に近い.火山周辺では地震波形の振幅データを使った火山性地震や微動の震源決定が行われている(例えば,Yamasato, 1997; Battaglia and Aki, 2003など).これらの振幅データを用いた震源決定では等方輻射が仮定されているが,本研究では微動の発生源の位置に先の解析結果を利用することで微動振幅の空間分布から微動源の放射特性を推定できる点に注目した.そこで周辺の18観測点で収録された微動データを使用し解析を行った.観測された振幅には震源の特性(規模と放射特性),サイト増幅特性,減衰の影響が入っている.放射特性は等方的であると仮定し,2点間の振幅比をとることで震源の影響を除去した.サイト増幅特性はアレイ解析から火口周辺に推定された微動源が正しいとして,その時の振幅比を利用した.地震波速度構造はアレイ解析と同じで一定としている.微動の発生メカニズムとして1つのtensile crackを仮定し,その放射特性と比較した.震源球上の観測点分布が不十分ではあるが,2カ所の微動源でクラックの向きや傾斜が違い,火道の形の変化やマグマの振る舞いの空間変化の可能性が示唆された.本研究では,複数アレイ観測データの解析により火山性微動の詳細な時空間変化を検出し,広範囲に分布した周辺の観測点のデータと合わせることでマグマの存在位置や状態の変化を知ることができることを明らかにした.この手法は他の火山にも適用可能である.また,異なる噴火段階で発生する火山性微動の解析は火山噴火機構の理解により役立つことが期待される.