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[SVC51-02] AMT法による立山地獄谷周辺の比抵抗構造
北アルプスの弥陀ヶ原(立山)火山には,現在も活発な噴気活動を行っている地獄谷と呼ばれる場所がある。この地獄谷は,過去に繰り返された水蒸気噴火によって形成されたとされ,近年では,硫黄流出をはじめ,噴気ガスの組成変化,沸点を超える高温噴気の出現など,活動の活発化が懸念されている地域である。本研究では,水蒸気噴火の発生場であった立山地獄谷の,熱水流体の分布と噴気孔の位置関係,またガスだまりの有無を調べるために,地獄谷を中心とした東北東?西南西方向の測線にそって8点AMT法(Audio-frequency Magnetotellurics)調査の観測点を設け,地下の比抵抗分布を2次元解析により推定した。その結果,地獄谷の直下には低比抵抗体が広がり,その下500m以深では高比抵抗体が存在することがわかった。また,相対的に低い比抵抗を示す領域が,高比抵抗体を割るように地獄谷浅部へと伸びているような構造も見られた。浅部の低比抵抗体は,より低比抵抗を示す上部と,相対的に比抵抗が高くなっている下部に別れており,地質や岩石学的情報から上部は熱水を含んだ粘土混じりの堆積層であると考えた。また,下部の相対的に高い比抵抗を示す領域は,熱水に高温のマグマ性ガスが入り混じったものではないかと思われる。粘土層は透水性が悪いため,この比抵抗体上部が,下部に存在するマグマ性ガスを留めるキャップの役割を果たしている可能性がある。深部にある高比抵抗体は,地獄谷周辺に広く露出する基盤の花崗岩であり,この基盤岩を割り浅部低比抵抗体へと伸びる相対的に低比抵抗の領域は,マグマ性ガスの供給路である可能性がある。この供給路の直上では,地獄谷で最も活動的な噴気孔が存在している。