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[SVC51-05] 火山性地盤変動における熱膨張モデルと茂木モデル
キーワード:熱膨張モデル, 茂木モデル, 重力変化, 地盤変動, 秋田駒ケ岳, 多孔質媒質
(1) 昨年本学会で提案した熱膨張モデル(狐崎・村岡,2013)について,その基礎面を茂木モデル(Mogi,1958)との関連において再構成した.茂木モデルでは,大地を半無限等方均質弾性体とし,地表を自由平面とする.地下に球状の圧力源を設定し,それによる地表の変位を求める.その際の地表の重力変化については,萩原(1977)が考察した.このモデルにおいては,球域内は基本的には空洞(あるいは異質物質)とされる.その特例として球域内が外部と同一物質で,域内の温度のみが上昇するとする.この場合,熱膨張が圧力源となり,茂木モデルは球状熱膨張モデル(STモデル)に転化する.この場合球域内では質量変化はなく,地表での重力変化も地表隆起によるフリーエア効果(FE)によってのみ生じる.(2)上記のSTモデルは,熱域が任意形状の場合にも拡張できる.熱域を微小な格子に分割するとする.各格子要素(立方体)は実効的には球状熱域要素として機能するので,それらによる出力(地表の変位,重力変化等)はSTモデルで与えられる.熱域全体による出力は各要素の出力の和となる.従って,任意形状の熱域においても,地表の垂直変位によるフリーエア効果(FE)のみが重力変化に寄与する*.*[注] 狐崎・村岡(2013)における関連記述がここでは訂正されている.(3)実際の火山体浅部は概ね多孔質媒質とみなせる.間隙は水で飽和しており,流通状態にあるとする.(1)(2)の熱膨張モデルにおいて,媒質をこのような水飽和多孔質に置き換える.この場合間隙水に圧力変化はなく,固体部(骨格)は間隙水とは独立に挙動する.固体部の熱膨張は,(2)で述べたように地表変位とFEによる重力変化を生む.一方,熱域内の間隙水は温度上昇(沸点以下)に対応して,自由に膨張し,その密度も低下する.(水の熱膨張率は固体(岩石)よりも10倍以上大きい.)これによる重力変化がFEに加算され,総合的には重力変化は若干増幅される.このことを秋田駒ケ岳に関わる数値例で示す.[参考文献]萩原幸男(1977): 伊豆半島の異常隆起を説明する茂木モデルとそれに伴う重力変化,震研彙報,52巻, 301-309.狐崎長琅・村岡淳(2013): 秋田駒ケ岳火山における重力変化と熱膨張モデル,地球惑星科学連合,講演予稿, SVC52-04.Mogi, K.(1958): Relations between the eruptions of various volcanoes and the deformations of the ground surfaces around them, Bull. Earthq. Res. Inst., Vol.36,99-134.