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[SVC51-09] 温泉地域の同位体挙動のケーススタディ
キーワード:温泉, 地熱, 同位体, 天水, 化石海水
1.はじめに 地熱地域の熱水流動を解析するにあたり、熱水中の同位体は、その熱水の起源や流動にともなう水岩石反応を示唆する。また、国内の温泉には様々な起源があり、マグマからの分離、天水の地下での加熱など考えられる。さらに、EGSに代表されるように、地下に水を注入し、熱抽出を早める例もある。 本発表では、近年話題となっている温泉発電むけの高温温泉などで酸素および水素の安定同位体分析を行った事例を紹介し、温泉起源の多様性について考察する。2.測定事例(1)八丈島 八丈島には現在3,300kWの地熱発電所が稼働している。八丈島の水理系を解明するために、地熱発電所周辺のいくつかの湧水、温泉そして地熱発電所の熱水の酸素・水素同位体比の比較検討を行った。その結果、湧水のδDは-35‰であり、酸素・水素同位体ダイヤグラムでは八丈島の降雨の変動範囲内のd=20付近に分布した。温泉水では湧水に近い値を示す例と、d=8付近で海水に近い値を示す例があり、島内に天水起源と海水起源の温泉が分布することが示された。また、地熱発電所の熱水の同位体比は、これらの温泉に比べ相対的にδ18Oが高く、マグマ水が関与していると考えられ、また地熱熱水と温泉熱水の起源が異なることを示唆する(2)新潟県松之山温泉地域 松之山温泉地域では、現在温泉バイナリー発電実証試験が行われている。この地域には100℃近い温度でCl濃度が10,000mg/l前後の高塩濃度の源泉がいくつか存在し、その1つを発電試験に利用している。これらの源泉のδDは-25‰付近、δ18Oは0‰付近であり、同地域の河川水の天水ラインより相対的にδ18Oが高い傾向であった。また、同地域のCl濃度が2,000mg/l程度の松之山4号井では、同位体比は、河川水と高温源泉の直線上に位置した。この地域付近には火山はないがガス田が近く、温泉からメタンガスの発生がありジオプレッシャー型と考えられていることから、高温温泉水の起源は化石海水と考えられ、また松之山4号井では化石海水の源泉と天水の混合が行われていることが示された。(3)静岡県南伊豆温泉地域 南伊豆温泉地域にも、100℃近い高温でCl濃度が10,000mg/l前後の源泉がいくつか存在する。また、その源泉の東側にも温泉が広がっているが、東に行くほど源泉の温度が低下し、同時にCl濃度が低下している。そこで、いくつかの源泉と湧水の酸素水素同位体比を測定したところ、全ての源泉と湧水は天水起源のライン上に位置した。これより、高温の源泉も天水起源であること、また温泉水が地表付近で東方に流動していく過程で天水により希釈され、温度、Cl濃度が低下することが示唆される。