日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC52_28AM2] 火山防災の基礎と応用

2014年4月28日(月) 11:00 〜 12:45 416 (4F)

コンビーナ:*萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)、宝田 晋治(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、藤田 英輔(防災科学技術研究所観測・予測研究領域 地震・火山防災研究ユニット)、佐々木 寿(アジア航測株式会社)、座長:服部 康男((財)電力中央研究所)、常松 佳恵(名古屋大学大学院環境学研究科)

11:00 〜 11:15

[SVC52-04] 高周波地震動の振幅分布から推定される泥流の発生位置と移動:2013年10月16日伊豆大島

*小木曽 仁1蓬田 清2 (1.気象庁精密地震観測室、2.北大理)

キーワード:地震動振幅分布, 震動源, 土石流, 伊豆大島

平成25年台風26号に伴う大雨により、10月16日未明に伊豆大島で大規模な土砂災害が発生し、大きな被害が発生した。発生した泥流に伴うと考えられる震動波形が東京大学地震研究所・防災科学技術研究所・気象庁が設置している伊豆大島火山観測網の複数の地震計で同時に記録されていた。振幅の大きい震動は16日0時から6時の間に少なくとも5回認められ、振幅の小さいものは無数に認められる。これらの震動はその始まりがはっきりしないため、P波などの相の到着時を利用した従来の震源決定手法を用いることはできない。そこで、振幅の大きい5つの震動の記録部分について、Battaglia and Aki(2003)、Kumagai et al.(2010)に基いて高周波成分の振幅分布からおのおのの震動源を推定した。この手法では、バンドパスフィルタをかけた波形についてRMS振幅を計算し、サイト特性を補正したのち、振幅の幾何減衰と内部減衰を仮定して、観測振幅との残差が最も小さくなる震源位置をグリッドサーチにて探索する。一般に振幅分布は方位依存性を持つが、地殻浅部の強い微細不均質による散乱効果のため、見かけ上振幅分布が等方的となる現象(Takemura et al., 2009)を利用している。本研究では、記録された震動の上下動成分に対して5-10Hzのバンドパスフィルタをかけたのち、それらの震動がS実体波から構成されているとして震源位置を探索した。その際、震源位置は地表面を仮定し、また、S波速度は1.44km/s、内部減衰はQ=100を仮定した。サイト特性は伊豆大島から離れた場所で発生した非火山性地震からの各観測点におけるコーダ波部分を用いて推定した。5つの震動源は、いずれも御神火スカイラインから元町地区の東側にかけて推定された。継続時間の短いひとつの震動を除いた4つの震動については、それぞれの震動の継続時間(約60~80秒)内で震動源が西方向(山側から下流側)へ移動しており、その震動内における土砂の移動を検知している可能性がある。その移動速度は約40km/hから70km/hに達していた。また、震源振幅の時系列はその最大値や継続時間が5つのイベントでそれぞれ異なり、泥流の発生形態の多様性を示している。一般的に、火山観測網は狭い範囲に多くの地震計が設置されており、本来の目的である火山活動に伴う地震や微動の観測のほか、本研究のような泥流の震源やその発生形態の推定にも有効である。振幅分布を利用した震源決定手法は準リアルタイムでその震動源や震源振幅の時系列が推定可能であり、火山周辺で発生するさまざまな災害の発生箇所や規模の早期推定に非常に有効であろう。謝辞:東京大学地震研究所、防災科学技術研究所、気象庁の伊豆大島観測網の地震波形を使用しました。また、国土地理院作成の数値地図50mメッシュ(標高)、及び電子国土システムによる背景地図を使用しました。