日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC52_28AM2] 火山防災の基礎と応用

2014年4月28日(月) 11:00 〜 12:45 416 (4F)

コンビーナ:*萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)、宝田 晋治(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、藤田 英輔(防災科学技術研究所観測・予測研究領域 地震・火山防災研究ユニット)、佐々木 寿(アジア航測株式会社)、座長:服部 康男((財)電力中央研究所)、常松 佳恵(名古屋大学大学院環境学研究科)

11:30 〜 11:45

[SVC52-06] マグマデータベースに基づく火山活動評価のための経験則を得る試み

*竹内 晋吾1土志田 潔1三浦 大助1 (1.電力中央研究所)

キーワード:マグマ, 噴出物解析, 火山活動評価, データベース

【目的】 国内の火山においては,活動履歴・噴火様式・噴火規模について品質の高いデータベース(Hayakawa, 1996-; 工藤・星住,2006-)が整備されつつある.その一方で,これらの噴火の原因となったマグマについて,岩石学的側面からは不明な事例が多い.そこで我々は,過去約10万年間に国内で発生した大規模噴火を中心に噴出物解析を進め,岩石学的性質に関するデータベース(マグマDB)の構築を進めている.マグマDBにより,岩石学的パラメーター(全岩組成・メルト組成・斑晶量等)と噴火パラメーター(噴火規模・噴火様式等)との関係を多数の噴火事例について検討することにより,両者の間の普遍的な関連性を得て,火山活動評価のための経験則を得ることを目指している.【解析対象と解析手法】 過去約10万年間に国内で起こった噴火のうち,約90事例について現在までに噴出物解析を行っている.大規模な噴火を可能な限り網羅するという方針の基に解析対象は選択された.噴火マグニチュード(M)でM=4-8の噴火事例を主に対象とし,比較的最近に起こったM=1-3の噴火事例も少数含む.現時点でマグマDBは,全岩組成・斑晶量(一部は斑晶モード組成)・石基組織画像(100 μm-2.5 mm四方)・cmスケールの火山岩組織元素像・電子像(1 cm-3 cm四方)のデータからなる.それらに加え,マグマ溜まり条件でのメルト組成に相当する石基組成を求めている点が大きな特徴である. 【解析結果】 噴出物解析を行った約90事例に加え,Takeuchi (2011)によってコンパイルされた国内事例11例を追加し,検討することにより,現時点では以下の傾向が見いだされつつある.以下では斑晶を含むマグマ全体を指す場合にはマグマを用い,液相のみを指す場合にはメルトを用いる.(1) 流紋岩質メルト(石基SiO2量>70 wt%)を含むマグマ(安山岩から流紋岩質マグマ)はM=4-8の噴火を引き起こす一方,玄武岩からデイサイト質メルト(石基SiO2量<70 wt%)を含むマグマ(玄武岩からデイサイト質マグマ)の噴火規模はM=5以下が大半である. (2) 流紋岩質メルト(石基SiO2量>70 wt%)を含むマグマは斑晶量が増大するにつれ,噴火の最大規模が小さくなり,0-20 vol%の斑晶量範囲では最大規模はM=8である一方で,20-50 vol%の斑晶量範囲では最大規模はM=6である.【今後の展望】 基本的な岩石学的パラメーターであるメルト組成や斑晶量によって噴火規模に関するある程度の制約が噴火実績の観点から与えられることが本研究から示唆される.噴火の初期段階で迅速な噴出物解析を行い,メルト組成や斑晶量を得ることにより,その後の噴火シナリオの構築にまで貢献できる可能性を秘めている.今後は,その他の岩石学的パラメーターと噴火パラメーターの関係を検討するとともに,例外がどの程度,存在するかを明らかにし経験則としての信頼性を高めていきたい.また岩石学的パラメーターと噴火パラメーターの関連性は実用的な経験則としてだけでなく,噴火メカニズムの普遍的理解のためにも重要な観察事実となる.