日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC52_28AM2] 火山防災の基礎と応用

2014年4月28日(月) 11:00 〜 12:45 416 (4F)

コンビーナ:*萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)、宝田 晋治(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、藤田 英輔(防災科学技術研究所観測・予測研究領域 地震・火山防災研究ユニット)、佐々木 寿(アジア航測株式会社)、座長:服部 康男((財)電力中央研究所)、常松 佳恵(名古屋大学大学院環境学研究科)

12:00 〜 12:15

[SVC52-08] 極座標系でみたた富士火山の地形と防災

*千葉 達朗1 (1.アジア航測株式会社)

キーワード:DEM, 安息角, 投影断面, スラッシュ雪崩, 溶岩流, 活断層

はじめに富士山は日本で一番高い山であると同時に最も活発な火山である。長期的に見ると、過去1万1千年間の噴出量は、48立方キロに及ぶ(宮地1988)。これは、カルデラ噴火を除けば日本一の値である。また、富士山は毎年30万人が山頂に登るほど傾斜がゆるく、火山礫を積み上げた巨大なボタ山のようなものともいわれる。一つの火口で数多くの噴火を繰り返した結果、火口の周りに直径10km比高2000mの巨大な円錐形の火山体が形成された。富士山は、小御岳、古富士、新富士と時代区分されており、段階的に積み上げるように成長してきた。古い山体の一部も斜面上に突き出すように残っている。小御岳や北東斜面から小富士にかけての古富士火山の尾根などである。富士山が見る方角によってさまざまな形を示すのは、このような特徴による。検討範囲富士山は巨大な円錐であるが、その斜辺の傾きは一様ではない。山頂から離れるに従い、徐々に傾きが小さくなるような"指数曲線"を描く。またこの曲がり具合は、方向によってかなり違なる。単純な”末広がりの円錐”ではない。本稿では、極座標変換という手法で、富士山にメスを入れ、切り開くことで、富士山を新たな視点からみていきたい。検討対象は、山頂(最高点ではなく、大内院のほぼ中央)を中心とする半径13.5kmの円形の範囲とした。この距離は、山頂から側火山分布限界までの距離である。北東方向の小臼、北西方向の下り山火口、南方向の大淵火口南限、南西方向の天母山はいずれもこの円周上に位置する。地形データについては、国土地理院の基盤地図情報0.4秒メッシュ(約10m)もとに、直交座標系(第VIII系)の50mメッシュにリサンプリングして使用した(図3)。極座標の原点は、山頂の大内院のほぼ中央(緯度35.36295,経度138.73035)とした。安息角一般に火山の斜面勾配は、火口から地上にもたらされた物質の状態や運動メカニズムで決定される。これを、安定勾配や安息角と呼ぶ。富士山の山頂の火口近傍では高温状態のマグマの飛沫が落下し、再び相互に付着して一体化した溶結降下火砕物が見られる。この付近は、35度以上の傾斜で安定している。山頂から少し離れ、傾斜が20度程度の地域では、高温のマグマがそのまま液体として流れた溶岩流や高温の紛体や気体がなだれのように斜面を高速度で下る火砕流のつくる地形が観察できる。さらに、傾斜が10度程度に緩くなると、土砂と水が混合し高密度の流れとなって谷底を流れる土石流・泥流などがあらわれる。これらをさらに、降下スコリアや降下火山灰などの風成層が覆うので、時間とともになめらかとなっていく。局地的には、谷が形成されたり埋めたてられたり、さまざまなことがおきている、総じて、周りより高い部分は削り取られ、低い部分は埋まっていく、かくして富士山は世界的にもまれな、見事な末広がりの巨大な円錐となった。平面図極座標変換後の地形を見ると、側火山の集中する部分は周囲よりも高く、ニキビのように盛り上がっていることがわかる。特に、135度方向と315度方向に集中していることがわかる。なお、250度付近の高度のギャップは、丹沢山地が東側から突き出している影響で、南の御殿場側が低くなっている。投影断面X軸に山頂からの方位、Y軸に高度をとり、50mDEMの格子点頻度分布を投影断面カラーで示し投影断面を作成した。富士山をスカートに例えれば、明るい下限の線がフレアスカートの周囲の高さに相当する。この図を見ると、最も標高が低いのは南西の富士宮方向であることがわかる。次に、御殿場方向、最後に富士吉田方向である。北西方向や南東方向に泡立つような模様が見えるが、側火山の山体の影響である。また、方位角200度から250度の忍野から山中湖にかけての方面は、周辺よりも有意に標高が高い。この方向に古富士の山体斜面があることなどを考慮すると、古富士の山麓緩斜面と見たほうがいいのだろう。文献千葉達朗(2010)富士山の地形-50mDEM円柱座標変換解析の試み-,富士学研究,7,1,3-13.宮地直道(1988)新富士火山の活動史,地質学雑誌,94,6,433-452.