18:15 〜 19:30
[SVC52-P02] 火山観測用自走式センサー「ほむら」の開発
キーワード:ロボット, 遠隔操縦, 携帯電話通信, 伊豆大島
火山噴火の予兆現象を把握し,火山噴火のダイナミックスの理解を行うためには,火口近傍さらには火口内における諸現象のモニタリングが必須である.現状において,火山活動の静穏時に設置された火口カメラによる監視,火山ガス,地震,電磁気学的観測などが行われている.一方,活動が活発化している火山において,新たに観測機器を設置しようとしても,危険性のためそれができず,十分な観測体制を持てない場合もある.これまでに,いくつかのプロジェクトで火山観測用の無人ロボットの開発が試みられてきたが,巨額な研究開発費が必要ということもあり,プロジェクトの終了とともに開発が停止し,実用化に至っていないのが現実である.
本研究では,この現状を打破し,火口内やごく近傍の機動的観測を行う実用的な無人陸上車両型ロボットのシステム「火山観測用自走式センサー」の開発を行う.我々はこのシステムを「ほむら」と名付けた.我々は,目視下あるいは遠隔地からの無線操縦により,火山フィールドを走行し,人が近づけない活動中の火口近傍や火口内の映像および搭載センサーによる観測データをリアルタイムで操縦局に送信するロボットを目指し開発を行っている.今回の発表では,ほむら開発の現況と,伊豆大島で行ったDocomoのFOMA無線通信を用いた遠隔操縦試験の結果について報告を行う.
ほむらの開発の基本指針は,(1)不整地走行において簡単に走行不能にならない車体とすること,および,(2)製作運用のコストに優れること,の2点である. この指針のもと,ほむら試作機を製作した.ほむらは,上下対象の構造を持つ6輪の車形状のロボットである.大きさは長さ750 x 幅430 x高さ 310 mm,重さは約12kgである.動力源は2セルのリチウムポリマー電池(7.4V, 容量約250Wh)である.機体内には,カメラ,GPS,CO2ガスセンサーなどのセンサー類を収納する.基地局との通信は,デジタル無線通信で行う.基地局とのコマンド,データの送受信,走行およびセンサーの制御は,搭載された小型コンピュータにより行われる.車体の製作費用は,約20万円であり,これまでに開発された火山観測ロボットに比べ桁違いに安価なものとなっており,小型ゆえに運搬,運用も簡単である.
実際の運用に当たり,大きな問題となるのは,無線通信手段である.現段階において,1.2GHz帯10kbpsの直接通信,2.4GHz帯38kbpsの直接通信,Docomo FOMAによる64kbps通信の3種類のデジタル無線通信モジュールを用いることができる.直接通信においては,通信インフラを必要としないため,どの火山でも運用可能であるが,確実な通信を行うためには,基地局から1km以内でほむらを見通すことが必要となる.したがって,直接通信による運用は,観測対象までかなり近づける場合に限られる.一方,FOMA通信においては,FOMA通信インフラが必要であるが,それがある場合には,基地局を任意の場所におくことが可能である.
我々は,2013年11月,伊豆大島三原山および裏砂漠において,FOMA通信を用いて,ほむらの遠隔操縦試験を行った.三原山の山頂火口より,北に約2kmはなれたカルデラ縁(伊豆大島温泉ホテル)に基地局を設置し,そこから山頂火口を目指して,ほむらをスタートさせた.操縦は,すべて,ほむらを目視することなく,内臓のカメラ,GPSなどのセンサーデータのみにより行われた.結果として,5日間,1回の電池交換により,ほむらは,大島温泉ホテルより登山道を経て,山頂に至り,登山道外の斜面を裏砂漠へ下り,温泉ホテルより約1kmの地点まで戻ることができた.この実験により,目視によらない遠隔操縦により,火口周辺へのアプローチが十分に可能であることがわかった.その一方で,溶岩流の盛り上がり部分が壁になり,ほむらに対してFOMA中継局方向がさえぎられると,FOMA無線は,不安定になり,最悪通信が完全に途絶してしまう.このような場所が,ほむらのルート上に4ヶ所あった.このことは,三原山において,遠隔操縦だけでほむらが山頂まで達することは実際に不可能であることを示している.陸上を走る観測ロボットを火山で運用する場合には,事前に十分な検討を行い,安定した無線通信手段を確保することが必須である.携帯電話無線網を利用する場合には,状況に応じ,臨時の中継局を設置するなどが必要になるであろう.
本研究では,この現状を打破し,火口内やごく近傍の機動的観測を行う実用的な無人陸上車両型ロボットのシステム「火山観測用自走式センサー」の開発を行う.我々はこのシステムを「ほむら」と名付けた.我々は,目視下あるいは遠隔地からの無線操縦により,火山フィールドを走行し,人が近づけない活動中の火口近傍や火口内の映像および搭載センサーによる観測データをリアルタイムで操縦局に送信するロボットを目指し開発を行っている.今回の発表では,ほむら開発の現況と,伊豆大島で行ったDocomoのFOMA無線通信を用いた遠隔操縦試験の結果について報告を行う.
ほむらの開発の基本指針は,(1)不整地走行において簡単に走行不能にならない車体とすること,および,(2)製作運用のコストに優れること,の2点である. この指針のもと,ほむら試作機を製作した.ほむらは,上下対象の構造を持つ6輪の車形状のロボットである.大きさは長さ750 x 幅430 x高さ 310 mm,重さは約12kgである.動力源は2セルのリチウムポリマー電池(7.4V, 容量約250Wh)である.機体内には,カメラ,GPS,CO2ガスセンサーなどのセンサー類を収納する.基地局との通信は,デジタル無線通信で行う.基地局とのコマンド,データの送受信,走行およびセンサーの制御は,搭載された小型コンピュータにより行われる.車体の製作費用は,約20万円であり,これまでに開発された火山観測ロボットに比べ桁違いに安価なものとなっており,小型ゆえに運搬,運用も簡単である.
実際の運用に当たり,大きな問題となるのは,無線通信手段である.現段階において,1.2GHz帯10kbpsの直接通信,2.4GHz帯38kbpsの直接通信,Docomo FOMAによる64kbps通信の3種類のデジタル無線通信モジュールを用いることができる.直接通信においては,通信インフラを必要としないため,どの火山でも運用可能であるが,確実な通信を行うためには,基地局から1km以内でほむらを見通すことが必要となる.したがって,直接通信による運用は,観測対象までかなり近づける場合に限られる.一方,FOMA通信においては,FOMA通信インフラが必要であるが,それがある場合には,基地局を任意の場所におくことが可能である.
我々は,2013年11月,伊豆大島三原山および裏砂漠において,FOMA通信を用いて,ほむらの遠隔操縦試験を行った.三原山の山頂火口より,北に約2kmはなれたカルデラ縁(伊豆大島温泉ホテル)に基地局を設置し,そこから山頂火口を目指して,ほむらをスタートさせた.操縦は,すべて,ほむらを目視することなく,内臓のカメラ,GPSなどのセンサーデータのみにより行われた.結果として,5日間,1回の電池交換により,ほむらは,大島温泉ホテルより登山道を経て,山頂に至り,登山道外の斜面を裏砂漠へ下り,温泉ホテルより約1kmの地点まで戻ることができた.この実験により,目視によらない遠隔操縦により,火口周辺へのアプローチが十分に可能であることがわかった.その一方で,溶岩流の盛り上がり部分が壁になり,ほむらに対してFOMA中継局方向がさえぎられると,FOMA無線は,不安定になり,最悪通信が完全に途絶してしまう.このような場所が,ほむらのルート上に4ヶ所あった.このことは,三原山において,遠隔操縦だけでほむらが山頂まで達することは実際に不可能であることを示している.陸上を走る観測ロボットを火山で運用する場合には,事前に十分な検討を行い,安定した無線通信手段を確保することが必須である.携帯電話無線網を利用する場合には,状況に応じ,臨時の中継局を設置するなどが必要になるであろう.