日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC53_28PM1] 火山とテクトニクス

2014年4月28日(月) 14:15 〜 16:00 413 (4F)

コンビーナ:*下司 信夫(産業技術総合研究所 地質情報研究部門)、西村 卓也(京都大学防災研究所)、古川 竜太(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、三浦 大助(財団法人電力中央研究所 地球工学研究所 地圏科学領域)、長谷川 健(茨城大学理学部地球環境科学コース)、土志田 潔(一般財団法人 電力中央研究所 地球工学研究所 地圏科学領域)、座長:鈴木 由希(東京大学地震研究所)

15:00 〜 15:15

[SVC53-04] 阿蘇カルデラ西方に分布する花房層の鉱物組成の時間変化

*杉山 芙実子1長谷中 利昭1 (1.熊本大学大学院自然科学研究科)

キーワード:花房層, 普通角閃石, 阿蘇‐4テフラ, 阿蘇‐4火砕流

阿蘇火山は4回の大規模火砕噴火を起こしたが,時間とともに火砕噴火を起こしたマグマの組成が変化し,阿蘇-4火砕流堆積物には斑晶に普通角閃石が含まれるようになった(Watanabe, 1979).阿蘇-4直前に噴火した大峰火山,高遊原溶岩にも普通角閃石の微斑晶が認められるので(黒川ら,2012),普通角閃石の出現は阿蘇火山のマグマ供給系の変化を知る手がかりになる.花房層は阿蘇‐4火砕噴火以前に形成した湖成層で,阿蘇カルデラから西方約20 kmに分布するので,堆積物中に含まれる鉱物を分析し,普通角閃石の出現時期を求めた.花房層は菊池市亀尾の花房台地に見られ,砂層とシルト層の互層からなる層厚約10 mの地層で(宮本,1962),阿蘇‐3火砕流と阿蘇‐4火砕流の間に形成した.試料採集は菊池市亀尾梶迫?木柑子で行い,梶迫では湖成層に含まれる軽石層,その直上にある砂層を採集,木柑子では阿蘇-4火砕流堆積物と境界を接するシルト層および,花房層模式地の層厚130 cmのシルト層を採集した.境界から150cmの位置でテフラを確認した.このテフラは花房層の堆積速度から求めた年代が10万年前に相当し,バブル型のガラスを多く含み,構成鉱物の組合せが一致したので,阿多テフラと考え,この広域テフラより上位を上部シルト層,下位を下部シルト層とした.鉱物分析は,採集した堆積物を水で撹拌し,沈殿した物質をふるい分けし,125-250 μmのサイズのものを用いた.(1)下部シルト層からは,斜長石,単斜輝石,斜方輝石の結晶が出てきた.この斜長石は自形結晶が無く,汚れた印象を与える面を持つ結晶がめだった.(2)上部シルト層中には下部シルト層では見られなかった普通角閃石と,自形を示す新鮮な斜長石の結晶が含まれていた.普通角閃石は自形を示すものがほとんどであった.単斜輝石と斜方輝石も含まれており,その量は阿蘇-4火砕流堆積物中のものと同程度であった.(3)軽石層中の軽石は全岩化学分析の結果,阿蘇-4火砕流堆積物と似通った組成を示したが,黒川ら(2012),山崎ら(2013)が報告した小谷軽石流堆積物,弁利スコリア流堆積物,大峰火山噴出物の化学組成とは異なる分化トレンドを示した.(4)軽石層直上の砂層中の鉱物には,斜長石,普通角閃石,単斜輝石,斜方輝石,不透明鉱物が含まれていた.さらに,下位の軽石層に無いかんらん石が認められた.EPMAで得た鉱物化学組成はWatanabe (1979) が報告したいずれかの阿蘇-4火砕流堆積物に一致するか近いものであった.なお,本研究で調べた試料にはHunter (1998) が阿蘇-4火砕流堆積物から報告したカミングトン閃石は認められなかった.以上の結果を総合すると,普通角閃石の出現は阿蘇-4火砕噴火の1万年前にさかのぼることがわかったが,明瞭なテフラ層が含まれていなかったので,普通角閃石結晶の由来は不明である.