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[SVC53-06] 霧島火山,最近1万年間の活動ステージ区分と南九州の火山活動との関連について
キーワード:霧島火山, ステージ, 新燃岳, えびの高原, 長期活動史
霧島火山は,加久藤火砕流噴火を境に古期霧島火山,新期霧島火山に分けられているが(井村・小林,1991),新期霧島火山,特に最新期の火山活動に関する活動期の分析はなされて来なかった.近年,新燃岳の1万年間の活動史より,新燃岳は活発な活動期と静穏な時期を繰り返していた火山であることが示された.その活動期は,5.6~4.5 cal ka BP,2.7~2.3 cal ka BPであり,2011年噴火は享保噴火から始まる最新の活動期に位置づけられる(田島・他,2013).加えて,4.5 cal ka BPと2.7 cal ka BPの間に中岳を起源とするテフラが複数層あることが判明し,霧島火山全体の活動を見直す必要性が生じた.なお,新燃岳と中岳起源の各テフラの間に挟まれる土壌厚から,中岳では4~3 cal ka BPの間に噴火が起きていた可能性が高いと推定される.一方,えびの高原の噴火活動史の解明より,9 cal ka BPに不動池溶岩が噴出し,4.3 cal ka BPに韓国岳の北斜面で水蒸気噴火に伴う岩屑なだれが発生し,1.6 cal ka BPに不動池で再度水蒸気噴火が発生し,今まで知られていなかった時期に噴火活動が生じていたことも明らかになった.以上の結果と,井ノ上(1988)による古高千穂,高千穂峰火山,筒井・他(2007)による御鉢火山,井村(1994)の噴火活動履歴を加えて霧島火山全体の火山活動を考察した場合,1万年より若い期間の霧島火山の活動は3つのステージに区分可能となる.はじめに9.0~8.0 cal ka BP頃のえびの高原での溶岩噴出,新燃岳での溶岩噴出活動から始まり,8.1~6.8 cal ka BPに高千穂峰(井ノ上,1998;奥野,2002)の成長,6.5 kaのEcテフラの頃まで続いた.この古高千穂・高千穂峰火山の成長によって特徴付けられる9.0~6.5 cal ka BPの時期は霧島火山全体の活動度が高まる活動ステージ(ステージC)と考えられる.その後,5.6 cal ka BP頃までは霧島火山全域での噴火活動が低調となる.続いて,5.6 cal ka BPに新燃岳において準プリニー式噴火が生じ,その後新燃岳では断続的に溶岩を流出させ4.5 cal ka BPに準プリニー式噴火を行った.4.6 cal ka BPには御池でのプリニー式噴火,4~3 cal ka BPには中岳で噴火が生じ,2.3~2.7 cal ka BPの新燃岳の活動が起きた.5.6~2.3 cal ka BPは,新燃岳・中岳の成長,御池の噴火で特徴付けられるステージであり,4.5 cal ka BP頃には霧島火山全体で活動度が高まった(ステージB).その後,1.6 cal ka BP頃までは霧島火山全体の噴火活動が低調となった.最新の活動は,1.6 cal ka BP頃のえびの高原の噴火が始まりと考えられるが,本格的には約1.3 cal ka BP頃に誕生した御鉢(筒井・他,2007)の活動からと推定される.初期は御鉢の成長が中心であったが,16~17世紀にはえびの高原,18世紀には新燃岳で享保噴火が発生した(ステージA).なお,17~18世紀は御鉢,新燃岳,えびの高原と霧島火山全体で噴火が生じており,霧島火山全域の活動度が高まった時期と考えられる.つまり,霧島火山では,新燃岳だけでなく霧島火山全域において,活動が活発になる時期と静穏になる時期を繰り返しており,現在は約1600年前頃から続くステージの中にあると考えられる.霧島火山の活動時期が明らかになる事によって,桜島火山など南九州の火山との活動の関係についても議論を行う環境が整いつつあり,霧島と桜島火山では多くの似た噴火年代値を示し,広域な運動との関連が示唆される.