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[SVC53-08] 陥没カルデラを形成する大規模火砕噴火におけるマグマ溜まりのサイズおよび噴出率
キーワード:大規模噴火, カルデラ火山, マグマ溜まり
カルデラの陥没メカニズムを,単純なピストンシリンダーモデルを適応してモデル化し,実際の陥没カルデラ形成噴火の前駆噴火の噴出量や総噴出量と比較することにより,陥没カルデラ形成噴火の発生条件を推測した.陥没カルデラは,マグマ溜まりから比較的短期間に大量のマグマが噴出することによりマグマ溜まりの天井が陥没して形成される.マグマ溜まり天井の破壊と沈降によって,マグマ溜まりに蓄積されている大量のマグマの噴出が促進されることから,陥没カルデラの形成条件は巨大噴火を駆動する重要なメカニズムである.多くのカルデラ形成噴火では,陥没開始に先立ち多量のマグマが短時間のうちに噴出するため,この前駆噴火の推移と駆動メカニズムの理解は,巨大噴火全体の推移を理解するために不可欠である.多くのカルデラ火山は,カルデラ形成噴火の前後にも様々な規模の噴火を繰り返すが,最大規模の噴火でのみ陥没カルデラが形成される.それよりも小規模な噴火はより高頻度で発生するが,陥没カルデラの形成には寄与しない.たとえば,姶良カルデラから29kaに発生したAT噴火 では,陥没に先行して大隅降下軽石が噴出し,ついで陥没開始後に入戸火砕流が噴出し,現在の姶良カルデラが形成されたと考えられている.一方,カルデラ形成前に噴出した福山軽石の噴火(~10km 3DRE)や,後カルデラ期最大の噴火であるP14(Sz-S)噴火(~4km3DRE)では顕著なカルデラ陥没は発生しなかったと考えられている.姶良カルデラの場合,陥没に先行して噴出した大隅降下軽石(~40㎞3 DRE)の噴出量は,顕著な陥没を起こさなかった最大噴火の噴出量を上回る.このような関係は,噴出量の推定が比較的精度良く行われている他のカルデラなどでも認められる.比較的若い14の陥没カルデラの例では,陥没開始までの噴出量はカルデラのサイズ(径)と正相関があり,大型のカルデラほど前駆噴火の噴出量は大きい.陥没カルデラ形成に必要な噴出量を,ピストンシリンダー型モデルを用いて推定した.このモデルでは,マグマ溜まりの減圧量がカルデラブロックを沈降させる駆動力,環状断層の摩擦がカルデラブロックの沈降に対する抵抗力となる.マグマ溜まりの減圧量は,マグマ溜まりの総体積に対するマグマ噴出量の比(噴出比)とマグマの体積弾性率にコントロールされる.環状断層の径が大きいほど,すなわち大型のカルデラほど陥没開始までの噴出比は小さくなる.大型のカルデラでは,より大量のマグマがマグマ溜まりに存在する状態でマグマ溜まりの天井が破壊されるため,より大量の火砕流を陥没開始後に噴出し得る.このモデルではカルデラ断層の形状を円筒形と単純化し,マグマの体積弾性率を一定と仮定しており,さらにカルデラ断層の径や深さの推定にも不確定性があるため,これらの見積もりには大きな誤差が伴うが,陥没開始までの噴出量を噴出比で割ると,それぞれの火山の陥没前のマグマ溜まりの体積と、陥没開始時及び噴火終了時の噴出率が求められる.環状断層の直径が約15km,マグマ溜まり天井の深さが約6kmと考えられる姶良カルデラの場合,噴火開始前のマグマ溜まりの体積は約600km3であったと推測される.陥没開始までにその約8%が大隅降下軽石として噴出し,陥没開始後にその約60%が入戸火砕流として噴出したと推測される.