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[SVC54-01] インドネシア,シナブン火山の活動履歴と噴火シナリオ
キーワード:Indonesia, Sinabung, volcanic eruption, eruption history, Scenario, pyroclastic flow
インドネシア,北スマトラに位置するシナブン火山は,2010 年8 月に有史以来初めての水蒸気爆発を行い,2013年9月再び活動を再開し,2014年1月-2月に溶岩崩落型の火砕流を頻発している.本火山は約7万4千年前のトバ湖を形成したカルデラ噴火の後に成長したと考えられる成層火山である。本火山は,西側に分布する古期火山岩類と,中央部から東側に分布する新期火山岩類からなる。山体を構成する噴出物は,主に,溶岩流,溶岩ドーム,火砕流堆積物,山体崩壊堆積物,および土石流堆積物である。プリニー式噴火によって生じる降下軽石堆積物が認められない.山頂部は厚い溶岩流(ないしドーム)か溶岩尖塔からなり,火口が南北方向に配列している.中腹部には複数の溶岩流が明瞭な地形を作っている.山麓部には溶岩崩落型の火砕流堆積物が火山麓扇状地を形成している.北東側山麓には山体崩壊堆積物が分布している。2010年以前の最も新しい噴火は,9-10世紀の噴火で,山頂部で溶岩ドームおよびスパインを形成し,南東麓に火砕流堆積物を堆積させている.溶岩類は玄武岩質安山岩?安山岩で,安山岩質のものは角閃石斑晶を含む。古期の火山岩類は新期の火山岩に比べてややK2O量で富んでいる。山頂のドームおよびスパインは変質を被っているため,新期の火山岩に比べSiO2に富み,Na2Oに乏しい傾向を持つ.2010年8 月-9月噴火では5回の水蒸気噴火を起こし,終息した.これら噴出物には新鮮なマグマ物質は確認されていない.2013 年9 月に入って再び水蒸気爆発を頻発した。11 月中旬からは火山灰中にマグマ物質の混入が認められ,11 月23 日のブルカノ式噴火では北東部に軽石が放出された。また,この噴火では噴煙が崩壊して小規模な火砕流が発生している。その後,12 月下旬から山頂火口に溶岩が出現し始めた。2014年1月からは火口をあふれ出した溶岩が山体斜面を流下しはじめ,その先端が崩落し,火砕流を頻発している.現時点で火砕流の最大流走距離4.5kmとなっており,9?10世紀の噴火とほぼ同じ規模である.2013年からの活動で噴出した本質物質の化学組成は,角閃石を含む安山岩で新期の火山岩類の組成範囲中でSiO2に富む組成傾向をしめす.これらは9-10世紀噴火の組成範囲内にある.2010年噴火後に提案された地質調査結果に基づく将来起こりうる最も可能性の高いシナリオは,雲仙普賢岳1991-1995噴火やモンセラート島のスフリエール火山1991年?現在噴火と同様の溶岩流ないし溶岩ドームを山頂部に形成し火砕流を頻発させる噴火である.一方,最も可能性の低いシナリオは,プリニー式噴火のような爆発的噴火を起こすことである. 2014年2月時点までの2013年-2014年噴火の推移は,提案された噴火シナリオの最も可能性のあるシナリオと同じ経路をたどっている.