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[SVC54-02] カムチャツカ半島北部, 火山フロントの海溝側に分布する未分化な単成火山群の岩石学的研究
キーワード:島弧, 高Mg安山岩, カムチャツカ半島, 三重会合点
太平洋プレートの西部は、千島-カムチャツカ海溝からオホーツクプレート下に沈み込んでおり、北部はアリューシャン海溝からベーリング海プレート下に斜めに沈み込んでいる。両者はカムチャツカ半島中部で交わり、三重会合点を形成している(Eichelberger et al., 2013)。太平洋プレートの北端はトランスフォーム断層になっており、マントルウェッジが北(ベーリング海方向)に向かって開いていると予想される。 カムチャツカ半島には少なくとも29の活火山が分布する。中央部は、北東―南西方向に長軸をもつ大地溝帯Central Kamchatka Depression(CKD)で大きく分けられ、CKDに集中する火山(例えばKluchevskaya Group, KG)と、CKDより海溝側(Eastern Volcanic Front, EVF)と背孤側(Sredinny Ridge, SR)にも火山があり、3つの火山列があると考えられている。 EVFは北緯55度付近(Kizimen火山)を北端とし、スラブ上面の等深線とともに西に折れ曲がり、KGに続くようにも見える。しかし、EVF北方延長上の、 Kumuroch山地にも単成火山群があることが、少なくとも1960年代に確認されている(Fedorenko., 1969)。地震面の観測や重力観測から推定された直下のスラブ深度は約60km(Gorbatov et al., 1997)、地殻の厚さは約25-30kmである(Park et al., 2002)。先行研究によると、それらの火山岩はカンラン石含有玄武岩―安山岩であり、高いMgO含有量(~11.8wt%)と低いFeO/MgO比(1以下)を示す(Uspensky and Shapiro., 1984)。我々は、航空写真の立体視から、Kumuroch山地に海溝に沿って南北50kmの間に15個の単成火山(ここではEast Cone火山群、ECと呼ぶ)を確認し、ヘリコプターによる調査を行った。 本研究では、ECのうち、8火山の溶岩ブロックから採取した火山岩の薄片観察・岩石記載・全岩化学組成分析を行った。得られた火山岩試料16個はほとんどが新鮮な玄武岩、玄武岩質安山岩であり、その内2つは捕獲岩を含み、1つは赤色酸化している。含まれる鉱物組み合わせは、カンラン石、単斜輝石、斜長石、不透明鉱物であり、火山ごとに鉱物の割合が異なる。試料の全岩化学組成はいずれも玄武岩~玄武岩質安山岩のシリカ含有量を持ち、FeO/MgOは全て2以下であり、比較的未分化な性質を示す。 MgO含有量は、同程度のシリカ量を持つ典型的な島弧火山玄武岩と比較すると、4wt%程度高く、これはCKDに分布する火山の玄武岩質溶岩と似た特徴を示し、高Mg安山岩に類似する、もしくは分類される。高Mg安山岩は、マントルの比較的水を多く含む条件での溶融(例えば、H2O不飽和条件下では1.0GPa, 1100-1250℃、H2O飽和条件下では1.5GPa, 1030-1150℃)で生じると考えられている(巽., 1995; 2003)。 薄片観察ではECの溶岩中に斜方輝石はほとんど見られない、一方でKGに産する溶岩には斜方輝石が含まれており(Churikova et al., 2013)、当地域のBezymianny火山の捕獲岩はスピネルハルツバージャイトとの報告がある(Ionov et al., 2013)。これらは、ソースマントルの鉱物構成、ソースマントルのH2O量、生じたマグマ中のH2O量と斑晶晶出温度・圧力条件のいずれか、もしくはそれらの組み合わせに、地域的な違いがあることを示唆する。 EC単成火山群の成因を他の地域と対比させながら明らかにすることで、特異なテクトニクス場でのマグマ生成について、より明確な制約が課せられると期待される。