日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC54_1AM2] 火山・火成活動とその長期予測

2014年5月1日(木) 11:00 〜 12:30 411 (4F)

コンビーナ:*及川 輝樹(独)産業技術総合研究所 地質情報研究部門)、三浦 大助(財団法人電力中央研究所 地球工学研究所 地圏科学領域)、長谷川 健(茨城大学理学部地球環境科学コース)、下司 信夫(産業技術総合研究所 地質情報研究部門)、石塚 吉浩(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、座長:味喜 大介(京都大学防災研究所附属火山活動研究センター)、前野 深(東京大学地震研究所)

11:30 〜 11:45

[SVC54-08] 西之島2013-2014年噴火における火山島の形成過程

*前野 深1中田 節也1金子 隆之1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:西之島, 火山島, 溶岩流, スルツェイ式噴火, ストロンボリ式噴火

日本近海での海底噴火は珍しくなく,海水面上に火山体の一部が出現する事例はしばしば報告されている.しかし多くの場合,一時的に陸化しても短期間のうちに浸食により消滅してしまう.新しい火山島が形成されるためには浅海に大量の溶岩が流出し,浸食に耐え得る強固な「島の核」となる部分が形成される必要があるが,そのような条件を満たす比較的規模の大きな海底噴火の発生頻度は高くはない.海域での噴火による陸化過程が詳細に観測・観察されることは極めてまれである. 2013年11月に始まった西之島沖の海底噴火では,溶岩流出が継続し新たな火山島を形成するに至った.新島は1ヶ月半後には西之島と接合し,その後も成長を続けていることから,火山島の誕生と成長の過程に関するさまざまな知見を与える可能性がある.本研究では噴火が確認された直後から,上空からの観察,公開された航空写真や衛星画像(海上保安庁,国土地理院,宇宙航空研究開発機構による)をもとに噴火様式とその推移について解析している. 西之島は大型の海底火山の山頂火口縁に位置するが,2013-2014年噴火は,この山頂火口内の西之島沖南東およそ400 m,水深数10 m の浅瀬で開始した.新島発見直後には海水が火口に浸入することによりスルツェイ式噴火が発生したが,島の成長とともに火口が海水面上に達した後は,ストロンボリ式噴火によるスコリア丘形成および溶岩流出へと噴火様式は移行した.その後主火口はほとんど同一の場所に存在し続け,スコリア丘の麓部から継続的に溶岩を流出し続けている.海に流出した溶岩流は水冷および自破砕により浅海底を埋め立てながら流動していると推定され,分岐を繰り返してほぼ全方位に流れて島を拡大している.溶岩流出とともにスコリア丘頂部ではストロンボリ式噴火が継続していることから,マグマは深部から安定して供給され続けていると考えられる. 噴火前の海底地形データをもとに,溶岩の海への流出量および流出率の時間変化を見積もったところ,流出量は2月初旬までの2ヶ月半でおよそ600万 m3 に達し,流出率は多少の変動を伴うものの0.5-1×105 m3/day 程度でほぼ一定である.この値は,日本国内では西之島以外で最も新しい火山島である昭和硫黄島噴火の溶岩流出期(1935年1-3月)の平均流出率およそ1×105 m3/day (Maeno and Taniguchi, 2006) と同程度である.一方,新旧の海底地形データの差分をもとに前回1973-74年西之島噴火における噴出量はおよそ2400万 m3と推定されることから,今回の噴火では2ヶ月半で前回のおよそ1/4の噴出量に達したことになる.なお,前回の噴火は水深100 m 程度から開始し,およそ半年に及ぶ海底噴火のステージの後に新島を形成した.今回の噴火推移や島の成長速度は前回と異なるが,これは今回の噴火が水深数10 m 以内の浅海域で開始したためと考えられる.2014年2月初旬の段階で,溶岩の浸食は一部に認められるものの島の面積変化への影響はほとんどないように見える.溶岩の流出状況と前回の噴火経緯を考慮すると,西之島は今後さらに面積を拡大していくと推定される.