18:15 〜 19:30
[SVC55-P10] 伊豆大島火山のマグマ蓄積期における重力変化
キーワード:伊豆大島火山, 重力変化, 地殻変動
気象研究所では,伊豆大島火山のマグマ蓄積過程の解明および次期噴火の前駆過程の検出を目指し,2004年3月より重力の繰り返し観測を実施している.ここでは,観測に使用している重力計スケールファクターの補正とともに,得られた重力変化の特徴について示す.
観測にはLaCoste & Romberg D型#109,Scintrex CG3M #454,Scintrex CG5 #033の計3台の相対重力計を使用している.測定点は,海岸沿いから山頂部まで,最大で約180 mgalの重力差があり,複数の重力計で測定した場合,スケールファクターの個体差のために重力差に系統的なずれが生じることが予想される.また,Scintrex CG3Mについては,いくつかの先行研究にてスケールファクターに時間変化が生じていることが報告されてきた.しかし,使用している重力計のスケールファクターの影響についてこれまで充分に吟味されていない.
スケール検定を目的とした測定は2012年に開始したため,これ以前の測定データに関しては絶対値としての補正は困難であるが,キャンペーン観測時に同時に測定したデータから重力計間の相対的な関係は確かめることができる.D#109による測定結果は比較的安定した結果が得られていることから,D#109を基準としたCG3M#454およびCG5#033の相対的なスケールを推定した.この結果,CG3M#454については,スケールが明瞭に時間変化していることが認められた.またCG5#033についても2010年に生じた故障の前後でスケールがステップ状に変化しているが,この量は修理に伴いメーカーが実施したパラメータ変更でほとんど説明がつく.このほか,D#109とCG5#033との比較からどちらか一方あるいは両方のスケールの非線形性を示唆する結果が得られた.現時点では断定的なことは言えないが,測定レンジの狭いD#109にて生じている可能性が考えられ,今後,吟味していく予定である.
上述の相対的スケール補正後のデータから系統的な重力変化が認識される.2008年7月から2010年6月にかけての2年間で,麓に対して標高の高い観測点での重力値が経年的に増加する結果が得られ,この変化量は最大で約100 micro-galにも達する.空間分布からは地殻変動源が推定されているカルデラ北部付近に中心があるように見えるが,仮にこの期間に観測されている地殻変動で説明しようとしても,振幅,位相ともに全く合わない.また,この期間に数cm~10cm程度の潮位の経年変化が見られるが,この程度の変化では山麓,山頂との間に100 micro-galに達する重力変化を作りだすことは困難である.一方,降水量の変化に対応している様にも見え,海水準上の不飽和層内の水分量の増加が一因かもしれない.ここで仮に地殻変動や環境要素の影響を全く考慮せずに,原因を質点の質量増加に押しつけて位置・質量増加を推定してみると,地殻変動観測で推定されるようにカルデラ北部の海水準下3 kmに推定され,質量増加量は1.8×108 tonにも達する.この量は伊豆大島におけるいわゆる大規模噴火でのマグマ噴出量に匹敵し,にわかには受け入れ難い.マグマ活動を適切に把握していくためにも,重力計特性の個体差の検証とともに降水等の影響の評価を進めていく必要がある.
観測にはLaCoste & Romberg D型#109,Scintrex CG3M #454,Scintrex CG5 #033の計3台の相対重力計を使用している.測定点は,海岸沿いから山頂部まで,最大で約180 mgalの重力差があり,複数の重力計で測定した場合,スケールファクターの個体差のために重力差に系統的なずれが生じることが予想される.また,Scintrex CG3Mについては,いくつかの先行研究にてスケールファクターに時間変化が生じていることが報告されてきた.しかし,使用している重力計のスケールファクターの影響についてこれまで充分に吟味されていない.
スケール検定を目的とした測定は2012年に開始したため,これ以前の測定データに関しては絶対値としての補正は困難であるが,キャンペーン観測時に同時に測定したデータから重力計間の相対的な関係は確かめることができる.D#109による測定結果は比較的安定した結果が得られていることから,D#109を基準としたCG3M#454およびCG5#033の相対的なスケールを推定した.この結果,CG3M#454については,スケールが明瞭に時間変化していることが認められた.またCG5#033についても2010年に生じた故障の前後でスケールがステップ状に変化しているが,この量は修理に伴いメーカーが実施したパラメータ変更でほとんど説明がつく.このほか,D#109とCG5#033との比較からどちらか一方あるいは両方のスケールの非線形性を示唆する結果が得られた.現時点では断定的なことは言えないが,測定レンジの狭いD#109にて生じている可能性が考えられ,今後,吟味していく予定である.
上述の相対的スケール補正後のデータから系統的な重力変化が認識される.2008年7月から2010年6月にかけての2年間で,麓に対して標高の高い観測点での重力値が経年的に増加する結果が得られ,この変化量は最大で約100 micro-galにも達する.空間分布からは地殻変動源が推定されているカルデラ北部付近に中心があるように見えるが,仮にこの期間に観測されている地殻変動で説明しようとしても,振幅,位相ともに全く合わない.また,この期間に数cm~10cm程度の潮位の経年変化が見られるが,この程度の変化では山麓,山頂との間に100 micro-galに達する重力変化を作りだすことは困難である.一方,降水量の変化に対応している様にも見え,海水準上の不飽和層内の水分量の増加が一因かもしれない.ここで仮に地殻変動や環境要素の影響を全く考慮せずに,原因を質点の質量増加に押しつけて位置・質量増加を推定してみると,地殻変動観測で推定されるようにカルデラ北部の海水準下3 kmに推定され,質量増加量は1.8×108 tonにも達する.この量は伊豆大島におけるいわゆる大規模噴火でのマグマ噴出量に匹敵し,にわかには受け入れ難い.マグマ活動を適切に把握していくためにも,重力計特性の個体差の検証とともに降水等の影響の評価を進めていく必要がある.