日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC55_1PO1] 活動的火山

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)、市原 美恵(東京大学地震研究所)

18:15 〜 19:30

[SVC55-P17] 阿蘇火山中岳第一火口における2012年以降の熱活動の特徴

*寺田 暁彦1 (1.東京工業大学火山流体研究センター)

キーワード:放熱量, 阿蘇火山, 火口湖, 噴火

阿蘇火山中岳第一火口は,非噴火期を通じて常に200 MWを超える放熱活動を長期間にわたって継続している国内有数の火山である.同火口は非噴火期に湯だまりと呼ばれる火口湖が形成されており,湖水蒸発という形で熱エネルギーを大気へと放出している.2006年以降,赤外カメラと水温観測ブイを組み合わせた信頼性の高い水温データに基づき,湖面放熱量の推定が可能となっている.
2006年から 220 MW 前後で長期安定していた湖面放熱量は,2012年3~5月に 600 MWを超えた.同時期,火口湖水位が約 5 m 減少したことが気象庁により計測されている(福岡管区気象台,2013).水位減少率は -9 cm/day に達し,これは2006-09年の静穏期に観測された最大値 -2.7 cm/day の約4倍に相当する.数値計算の結果,この時の水位減少は,湖底からの熱供給率増大により,湖面蒸発量が増加したことが原因と考えられる.また,湖水溶存成分分析によれば,シリカ濃度が2011年12月以降は明瞭に増加し,特に2012年3月には,湯だまりとしては過去最高の 580 mg/Lが得られた.これは,地下浅部熱水系の温度が上昇したことを示唆する.その一方で,地震活動の顕著な高まりは認められなかった.
その後,火口湖水量は増減しながら少ない状態で推移し,放熱率計測が難しい状態となった.2013年9月以降は火口湖がほぼ消滅し,湖底噴出した火山ガスは,湖水の関与を殆ど受けずに大気へと放出される状態に移行した.このため,水平風で棚引く噴煙の形状に基づいて放熱量を推定する方法を用いて,第一火口からの放熱量推移を検討した.噴煙解析に用いる映像は,気象庁福岡管区気象台が阿蘇火山博物館に設置している監視カメラで得られたものである(許諾番号:福気業第183号,263号)
解析の結果,地震活動が低調かつ SO2 放出量も以前と同程度の時期については,200-300 MW 前後の放熱量が算出された.この値は,火口湖観測で見積もられた非噴火期の典型値と矛盾しない.気象庁によれば,2013年9月や2013年12月~2014年1月にかけて,地震活動の顕著な活発化とともに,SO2 放出量として 2000 t/d を超える値が観測された.特に2014年1月には少量の火山灰噴出も確認された.噴煙解析の結果,これらの時期の放熱量は 800-1000 MW前後と推定された.静穏期と比較すれば,この値は SO2 増加量比と調和的である.すなわち,噴煙量の増減は,地下水蒸発量ではなくマグマからの脱ガス量の増減を反映しているものと推定される.

謝辞 データ取得にあたり,福岡管区気象台の後小路義弘氏,長門信也氏のご助力を頂きました.ここに記して深く感謝します.