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[SVC55-P19] 阿蘇火山で観測された長周期地震活動の活発化を伴う地殻変動について
キーワード:阿蘇火山, 地殻変動, 長周期地震, 火山ガス, 火道
はじめに
近年の阿蘇火山では、1989年-1993年の噴火以来、マグマを放出するような噴火活動は生じていない。しかし、2005年、2009年および2011年に小規模噴火が発生するなど、静穏期から本格的な活動期に移行する段階を迎えているとも考えられる。
このような状況のもと、2013年9月および12月に阿蘇火山の噴火警戒レベルが1から2に引き上げられ、2014年1-2月には小規模な噴火が発生したとされている。
我々は、2013年9月のレベル上昇前および2014年1月の小噴火後に、長周期地震活動の活発化をともなう明瞭な歪み変化と傾斜変化を火口近傍でとらえたので報告する。
観測坑道について
京都大学火山研究センターでは、1987年以降、中岳第一火口から南西に約1km離れた地点の地下30mにある観測坑道で地震観測や地殻変動観測などを実施してきた。この坑道は等辺長約25m,斜辺長約35mの直角二等辺三角形の形状を有し、坑道内にはインバール棒伸縮計3成分、水管傾斜計2成分、広帯域地震計が設置されている。伸縮計および傾斜計のデータは、22bit,1秒サンプリングでA/D変換されたのち、リアルタイムで火山研究センターに転送されている。
阿蘇火山の長周期地震
阿蘇火山では、その静穏期においても、中岳火口直下から西斜め下方に伸びた亀裂状の火道を震動源として、卓越周期15秒の微動(長周期地震)が発生している(Yamamoto et al., 1999)。マグマ溜まりから放出される火山ガスが、火口直下の深さ1.5kmにある帯水層で熱水反応を起こし、火口直下の深さ1-2km に圧力源を形成しガスを一時的に溜める。そして、その溜まったガスが火口に抜けるときに起こる非常にゆっくりとした振動が長周期微動の発生源だと考えられている。さらにこの圧力源は、1994年に頻発した水蒸気爆発の数分前に急激に膨張し、圧力を一時的に溜めていた事も明らかになっている(Kaneshima et al., 1996, Kawakatsu et al., 2000) 。
観測された変動とその変動源
2013年9月23日より活発化した地震活動は、24および25日に2000回を超える火山性地震が観測されるに至り、噴火警戒レベルが2に引き上げられた(気象庁、2013)。この地震活動に先立ち、23日の15:00頃より歪み変化が観測されはじめた。火口方向に設置された伸縮計で観測された変動は当初伸びを示していたが、24日00:00頃に縮みへと逆転し、26日06:00頃にピークとなった(1マイクロstrain)。この歪み変化の逆転は、中岳第一火口直下にMogiソースを仮定した場合、約1.2km以深の膨張源がそれより浅い部分へ移動したことで説明は可能である。しかし、Mogiソースの膨張では、火口方向が沈降する傾斜変動が説明できない。そこで、長周期地震の振動源である亀裂状火道(クラック)の開口による地殻変動をOkada(1992)にしたがって計算し、観測された変動と比較した。その結果、深さ約3kmで始まった開口が、上部へと移動することで、観測された歪み変化と傾斜変化を定性的には説明できることがわかった。
2013年9月、2014年1月のいずれの場合も、二酸化硫黄の放出量が一時的に増大した観測されている。したがって、観測された地殻変動は、地下深部のマグマだまりから供給される火山ガスの量が一時的に増加し、クラックを膨張させたことにより、引き起こされたものと解釈することができる。
近年の阿蘇火山では、1989年-1993年の噴火以来、マグマを放出するような噴火活動は生じていない。しかし、2005年、2009年および2011年に小規模噴火が発生するなど、静穏期から本格的な活動期に移行する段階を迎えているとも考えられる。
このような状況のもと、2013年9月および12月に阿蘇火山の噴火警戒レベルが1から2に引き上げられ、2014年1-2月には小規模な噴火が発生したとされている。
我々は、2013年9月のレベル上昇前および2014年1月の小噴火後に、長周期地震活動の活発化をともなう明瞭な歪み変化と傾斜変化を火口近傍でとらえたので報告する。
観測坑道について
京都大学火山研究センターでは、1987年以降、中岳第一火口から南西に約1km離れた地点の地下30mにある観測坑道で地震観測や地殻変動観測などを実施してきた。この坑道は等辺長約25m,斜辺長約35mの直角二等辺三角形の形状を有し、坑道内にはインバール棒伸縮計3成分、水管傾斜計2成分、広帯域地震計が設置されている。伸縮計および傾斜計のデータは、22bit,1秒サンプリングでA/D変換されたのち、リアルタイムで火山研究センターに転送されている。
阿蘇火山の長周期地震
阿蘇火山では、その静穏期においても、中岳火口直下から西斜め下方に伸びた亀裂状の火道を震動源として、卓越周期15秒の微動(長周期地震)が発生している(Yamamoto et al., 1999)。マグマ溜まりから放出される火山ガスが、火口直下の深さ1.5kmにある帯水層で熱水反応を起こし、火口直下の深さ1-2km に圧力源を形成しガスを一時的に溜める。そして、その溜まったガスが火口に抜けるときに起こる非常にゆっくりとした振動が長周期微動の発生源だと考えられている。さらにこの圧力源は、1994年に頻発した水蒸気爆発の数分前に急激に膨張し、圧力を一時的に溜めていた事も明らかになっている(Kaneshima et al., 1996, Kawakatsu et al., 2000) 。
観測された変動とその変動源
2013年9月23日より活発化した地震活動は、24および25日に2000回を超える火山性地震が観測されるに至り、噴火警戒レベルが2に引き上げられた(気象庁、2013)。この地震活動に先立ち、23日の15:00頃より歪み変化が観測されはじめた。火口方向に設置された伸縮計で観測された変動は当初伸びを示していたが、24日00:00頃に縮みへと逆転し、26日06:00頃にピークとなった(1マイクロstrain)。この歪み変化の逆転は、中岳第一火口直下にMogiソースを仮定した場合、約1.2km以深の膨張源がそれより浅い部分へ移動したことで説明は可能である。しかし、Mogiソースの膨張では、火口方向が沈降する傾斜変動が説明できない。そこで、長周期地震の振動源である亀裂状火道(クラック)の開口による地殻変動をOkada(1992)にしたがって計算し、観測された変動と比較した。その結果、深さ約3kmで始まった開口が、上部へと移動することで、観測された歪み変化と傾斜変化を定性的には説明できることがわかった。
2013年9月、2014年1月のいずれの場合も、二酸化硫黄の放出量が一時的に増大した観測されている。したがって、観測された地殻変動は、地下深部のマグマだまりから供給される火山ガスの量が一時的に増加し、クラックを膨張させたことにより、引き起こされたものと解釈することができる。