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[SVC55-P26] 2013 年桜島人工地震探査の概要と2008年実施探査との比較
キーワード:人工地震探査, 時間変化, 火山活動, 噴火, 桜島火山, 姶良カルデラ
1.はじめに
2006年の桜島昭和火口の噴火再開後, 2008年に爆発的噴火が発生し,2009年には年間578回発生した.その後2010~2011年は年間1000回,2012年は900回,2013年は800回を超えた.ここ2年で回数は減少しているが昨年8月18日の噴煙高5 kmの噴火など規模の大きい噴火の割合が増えている.また,姶良カルデラから桜島へのマグマ供給経路が明らかになりつつあり,姶良カルデラの膨張は2013年現在も継続している(井口・他, 2013; 山本・他, 2013).昭和火口の噴火が活発化する前の2008年11月に桜島および姶良カルデラの浅部構造解明を目的として人工地震探査が実施された(井口・他,2009).そして,P波速度構造推定により姶良カルデラ中央部の深さ1.5~3 kmと桜島直下の1~2 kmに低速度域の存在が指摘された(Miyamachi et al., 2013).2009年より桜島にて反射法探査が毎年繰り返し実施されてきており,反射位相の変化が検出され,マグマ供給路における流体存在量の変化として解釈された(Tsutsui et al., 2013; 筒井・他,2013).そこで,桜島および姶良カルデラの地下構造の時間変化検出を目的として人工地震探査を2013年12月に実施した.
2.2013年桜島構造探査観測実施概要
2013年12月1日〜7日の日程にて本探査を繰り返し反射法探査(筒井・他,2014)と同時に,国立大学と気象庁から50名の参加者にて実施された.データ収録には本探査と反射法探査ともにデータロガー白山工業LS-8200SD(500Hzサンプリング)を用いた.本探査では2008年探査と同じ2Hz上下動地震計(Sercel L-22D)を用いて,アダプターコネクター経由にてロガーに接続した.ロガーは2008年探査(白山工業LS-8000SH, 250Hzサンプリング)と異なるが,同時並行観測にて同じ波形が収録できることを事前確認した.発破時刻を含め夜間9時間連続観測が行われ,爆発的噴火に伴う地震動と火山性微動も記録した.島内外6箇所で発破(薬量200 kgか300 kg)が2008年探査とほぼ同一場所で12月5日未明に行われた.地下構造の時間変化を検出するには爆破点と観測点の位置の再現性が高いのが望ましい.発破点については水平位置の差が小さい順に2.4 m(S1),5 m(S5),15 m(S4),50 m(S2),62 m(S6),そして204 m (S3)であった. S3を除く発破にて波形の再現性が高かった.観測点数280で2008年の観測点位置の再現に試みた.2008年の観測点写真による位置同定を優先して,再現状況を以下の基準でランク付けして再現状況を示す.ランク●(163点):写真を基にして同一場所に設置.ランク○(90点):簡易GPSによる測位精度内にて同一場所に設置.ランクN(27点):ランク●・○以外.つまり,観測点全体の9割にて2008年と同一場所に設置することができた.
3.2008年と2013年の波形比較と相互相関
S3を除く発破の同一設置観測点(ランク●および○)と桜島火山観測所の7定常観測点のデータについて2008年と2013年の波形を比較することで構造の時間変化の検出を試みる.なお,同一設置観測点のうち2008年もしくは2013年の探査において地震計の不具合あったもしくはノイズレベルが高い16点観測点は解析対象から外した.2008年と2013年の同一設置観測点について発破地震動波形についてサンプリングを250Hzに統一してバンドパスフィルタ(2-8Hz)を施してP波初動を含む15 sのウインドウで相関計数を計算した.過半数の観測点にて相関が0.8以上であるが,北岳・南岳・昭和火口周辺と桜島南東部では0.4-0.6と低い.この傾向は島外発破点と島内発破点に共通して見られた.よって,比較的浅部の構造が時間変化していることが示唆される.一方,昭和火口に比較的近い観測点については火山性微動の影響による相関変化の可能性も捨てきれない.
【桜島反復地震探査グループ参加機関】
北海道大学大学院理学院,秋田大学大学院工学資源学研究科,東北大学大学院理学研究科,東京大学地震研究所,東京工業大学火山流体研究センター,名古屋大学大学院環境学研究科,京都大学大学院理学研究科,京都大学防災研究所,鹿児島大学大学院理工学研究科,気象庁地震火山部,気象庁仙台管区気象台,気象庁福岡管区気象台,気象庁鹿児島地方気象台
2006年の桜島昭和火口の噴火再開後, 2008年に爆発的噴火が発生し,2009年には年間578回発生した.その後2010~2011年は年間1000回,2012年は900回,2013年は800回を超えた.ここ2年で回数は減少しているが昨年8月18日の噴煙高5 kmの噴火など規模の大きい噴火の割合が増えている.また,姶良カルデラから桜島へのマグマ供給経路が明らかになりつつあり,姶良カルデラの膨張は2013年現在も継続している(井口・他, 2013; 山本・他, 2013).昭和火口の噴火が活発化する前の2008年11月に桜島および姶良カルデラの浅部構造解明を目的として人工地震探査が実施された(井口・他,2009).そして,P波速度構造推定により姶良カルデラ中央部の深さ1.5~3 kmと桜島直下の1~2 kmに低速度域の存在が指摘された(Miyamachi et al., 2013).2009年より桜島にて反射法探査が毎年繰り返し実施されてきており,反射位相の変化が検出され,マグマ供給路における流体存在量の変化として解釈された(Tsutsui et al., 2013; 筒井・他,2013).そこで,桜島および姶良カルデラの地下構造の時間変化検出を目的として人工地震探査を2013年12月に実施した.
2.2013年桜島構造探査観測実施概要
2013年12月1日〜7日の日程にて本探査を繰り返し反射法探査(筒井・他,2014)と同時に,国立大学と気象庁から50名の参加者にて実施された.データ収録には本探査と反射法探査ともにデータロガー白山工業LS-8200SD(500Hzサンプリング)を用いた.本探査では2008年探査と同じ2Hz上下動地震計(Sercel L-22D)を用いて,アダプターコネクター経由にてロガーに接続した.ロガーは2008年探査(白山工業LS-8000SH, 250Hzサンプリング)と異なるが,同時並行観測にて同じ波形が収録できることを事前確認した.発破時刻を含め夜間9時間連続観測が行われ,爆発的噴火に伴う地震動と火山性微動も記録した.島内外6箇所で発破(薬量200 kgか300 kg)が2008年探査とほぼ同一場所で12月5日未明に行われた.地下構造の時間変化を検出するには爆破点と観測点の位置の再現性が高いのが望ましい.発破点については水平位置の差が小さい順に2.4 m(S1),5 m(S5),15 m(S4),50 m(S2),62 m(S6),そして204 m (S3)であった. S3を除く発破にて波形の再現性が高かった.観測点数280で2008年の観測点位置の再現に試みた.2008年の観測点写真による位置同定を優先して,再現状況を以下の基準でランク付けして再現状況を示す.ランク●(163点):写真を基にして同一場所に設置.ランク○(90点):簡易GPSによる測位精度内にて同一場所に設置.ランクN(27点):ランク●・○以外.つまり,観測点全体の9割にて2008年と同一場所に設置することができた.
3.2008年と2013年の波形比較と相互相関
S3を除く発破の同一設置観測点(ランク●および○)と桜島火山観測所の7定常観測点のデータについて2008年と2013年の波形を比較することで構造の時間変化の検出を試みる.なお,同一設置観測点のうち2008年もしくは2013年の探査において地震計の不具合あったもしくはノイズレベルが高い16点観測点は解析対象から外した.2008年と2013年の同一設置観測点について発破地震動波形についてサンプリングを250Hzに統一してバンドパスフィルタ(2-8Hz)を施してP波初動を含む15 sのウインドウで相関計数を計算した.過半数の観測点にて相関が0.8以上であるが,北岳・南岳・昭和火口周辺と桜島南東部では0.4-0.6と低い.この傾向は島外発破点と島内発破点に共通して見られた.よって,比較的浅部の構造が時間変化していることが示唆される.一方,昭和火口に比較的近い観測点については火山性微動の影響による相関変化の可能性も捨てきれない.
【桜島反復地震探査グループ参加機関】
北海道大学大学院理学院,秋田大学大学院工学資源学研究科,東北大学大学院理学研究科,東京大学地震研究所,東京工業大学火山流体研究センター,名古屋大学大学院環境学研究科,京都大学大学院理学研究科,京都大学防災研究所,鹿児島大学大学院理工学研究科,気象庁地震火山部,気象庁仙台管区気象台,気象庁福岡管区気象台,気象庁鹿児島地方気象台