日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC55_1PO1] 活動的火山

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)、市原 美恵(東京大学地震研究所)

18:15 〜 19:30

[SVC55-P29] GPS連続観測データから明らかにした2006年以降の桜島火山の圧力源移動

*堀田 耕平1井口 正人2大倉 敬宏1山本 圭吾2 (1.京都大学大学院理学研究科、2.京都大学防災研究所)

キーワード:桜島火山, 姶良カルデラ, 地盤変動, GPS, 茂木モデル

桜島火山の火山活動に伴う地盤上下変動は主に精密水準測量により検出され,姶良カルデラ下約10 km(主圧力源)と南岳山頂火口直下約4 km(副圧力源)で膨張・収縮を繰り返す2つの圧力源によって引き起こされていると解釈されてきた(江頭,1989,京都大学防災研究所年報)。桜島の主圧力源があるとされる姶良カルデラ周辺の地盤は,1993年以降沈降から隆起に転じ,現在まで継続している。一方,桜島で連続GPS観測が開始された1995年ごろ以降では,1999年末の南岳山頂噴火活動活発化が顕著であり,2006年6月には昭和火口の噴火活動が始まった。我々は,これらに先立って急激な膨張が検出された時期の地盤変動を1圧力源で近似することで,圧力源が姶良カルデラから桜島北岸付近の深さ6~8 kmに近づくことを指摘した(堀田ほか,2013,京都大学防災研究所年報)。これは,姶良カルデラ下の主圧力源と山頂火口直下の副圧力源が膨張し,見かけ上圧力源が桜島に近づいたものと考えられる。2006年に噴火活動が始まった昭和火口では,2009年以降噴火活動の多い状態が続いている。本研究では,2006年以降のGPSデータを解析し,昭和火口噴火活動に伴うマグマの移動過程を推定した。
桜島火山観測所のGPS連続観測点のデータと国土地理院のGEONETデータを用い,GIPSY-OASIS II ver.6.1.2のPPP-AR解析を行って各観測点の日々の座標値を計算した。2006年以降,2009年春までは目立った変動は見られないが,2009年春ごろから地盤変動の膨張・収縮量が増加している。
ここで,最も顕著な変動率が検出された2011年10月~2012年3月の期間に着目した。まず,この期間全体の平均的な2圧力源の位置を遺伝的アルゴリズムで探索したところ,姶良カルデラ下深さ8.3 km(圧力源A)と桜島下深さ2.9 km(圧力源B)にそれぞれ増圧源が決まった。次に,姶良カルデラ下の主圧力源の体積変化量と桜島下の副圧力源の位置および体積変化量を,圧力源の決定精度がよく,圧力源の変化も十分捉えられると考えられる4ヶ月の時間窓を設定して10日ずつずらしていくことで探索した。この場合,主圧力源の位置は過去の研究でも概ね2011年10月~2012年3月の期間全体の平均的な圧力源Aの位置に決まっていることから,この平均的な位置で固定した。時間窓1(2011/10/1~2012/1/31)から6(2011/11/21~2012/3/20)にかけては,副圧力源は北岳付近から徐々に桜島北部に近づき,それに伴って深さは3.1 kmから6.3 km,体積変化量は+0.44×106 m3から+2.39×106 m3といずれも増加する傾向にあったが,時間窓7(2011/12/1~2012/3/31)で南岳下深さ3.5 kmに移動し,体積変化量は+0.27×106 m3にまで減少した。時間窓6・7の中間に時間窓6-2(2011/11/26~2012/3/25)を設定して探索したところ,副圧力源は時間窓6と7の副圧力源のほぼ中間にあたる北岳付近の深さ4.8 kmに位置した。桜島北部にあるGPS観測点では,2011年12月下旬ごろ変動パターンが変化しており(例えば,FUTG観測点では桜島西部のSVOG観測点に対する北向きの変位が12月下旬ごろに停止した),桜島では2011年12月から噴火活動が活発化していることから,この時期に姶良カルデラから桜島へのマグマの移動があった可能性がある。