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★ [U03-03] 学術情報のオープン化と科学データ
キーワード:オープンデータ, 科学データ, ICSU-WDS, RDA, G8
学術情報は、広い意味での科学、人文学の情報基盤であると考えるならば、17世紀の学術ジャーナル Philosophical Transactionsの成功から始まる学術情報、つまり論文の公開と共有は、近代科学が現代社会を構成する重要な要素となるために大きな役割をはたしてきたと言ってよいのではないだろうか。一方で、現代の科学技術研究においては論文だけで表現しきれない数値データ、3次元空間情報、音声、動画、などなどがディジタルメディアとして研究の発展と検証を支える重要な学術情報として国際的にも認識されるようになってきている。ジャーナルのオープンアクセス化が、印刷文化から電子メディア上への学術情報基盤の移行に相乗りした情報共有と科学技術の発展とイノベーションのための一助であるとすれば、上記のような研究データ類のうち、公開して共有すべきものも文献類と同じく情報基盤として整備される必要がある。2013年のG8首脳会合およびG8国科学大臣・アカデミー会長会合においてオープンデータおよび研究データのオープン化の原則的認識が共有され、ICSU-WDS (World Data System)のようなアカデミーサイドからの科学データの保全と共有・利活用、RDA (Research Data Alliance)のような政府関係の議論のある科学技術情報インフラのための活動、など多方面からの研究データの共有化の議論が進展しつつある。その一例として、共有されたデータに国際共通の恒久的識別子(Persistent identifier;実際にはDOIなどが用いられる)を付与して、論文出版とデータ出版をリンクさせるデータ引用(data citation)の活動が、Thomson Reuter, Elsevier, Wiley など学術出版社とWDS, RDA, DataCite、ICSTI, Force11などの国際組織によって積極的に進められつつある。データの保存・公開・審査/評価など多くの課題が残されているが、文献中におけるデータセットのDOI引用を論文のDOI引用と同レベルの学術業績評価に用いる議論などをふくめて、種々の困難を乗り越えて「データ出版」の概念が論文とともに成立するかどうか、今後の発展が待たれるところである。