日本地球惑星科学連合2014年大会

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[U-04_29AM1] 最新の大気科学:航空機による大気科学・地球観測研究の展開

2014年4月29日(火) 09:00 〜 10:45 211 (2F)

コンビーナ:*小池 真(東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻)、近藤 豊(東京大学・大学院理学系研究科)、新野 宏(東京大学大気海洋研究所海洋物理学部門海洋大気力学分野)、佐藤 正樹(東京大学大気海洋研究所)、座長:足立 光司(気象研究所)

10:30 〜 10:45

[U04-07] 冬の日本海およびオホーツク海上の飛行機観測

*藤吉 康志1 (1.北海道大学低温科学研究所)

キーワード:雪雲, 海氷, 海洋境界層

日本周辺の海域では、冬季の季節風吹き出し時に、大量の熱・水蒸気が海洋から大気に供給され、気団変質と呼ばれる現象が起こる。この気団変質は活発な対流により大気混合層や筋状の雪雲、さらには海氷を発達させる。日本海の雪雲は沿岸に世界有数の豪雪をもたらすと同時に我が国の重要な水資源をもたらす。また、近年の地球温暖化によって急激に面積が減っている北極海周辺の海氷は、大気や海洋の大きな熱的インパクトとして、大気・海洋の循環に大きな影響を与えている。このように、冬の寒冷海洋域は気候や水資源的にも重要な現象が生起している場所であるため、航空機を用いた現場観測を実施した。日本海の気団変質過程についてはこれまで数値モデルや客観解析データを用いた研究は多数行われてきた。しかし、大気境界層の発達過程を調べるには海面熱フラックスが最大となるロシア沿岸域から日本海上空までの直接観測が必要不可欠である。そこで我々は、寒気の吹き出しの強さが異なる2001年1月と2月にロシア領内の日本海上空でロシア航空機を用いて大気境界層及び雲内観測を行った。飛行は、ハバロフスクを基点として風下方向に約350㎞までの範囲を、複数高度で行った。観測は、寒気吹き出しが弱く筋雲が全く発生しない条件下と、寒気が強く筋雲が発達した条件下、及びその中間の条件下で行った。また、オホーツク海は冬季に結氷し、海氷は海面の熱・水蒸気フラックスを減少させ、その影響は, 局地的にも全球的にも現れる。さらに、オホーツク海では、場所によって海氷密接度に差があり、狭い開水面(リード)を通して気団変質が起きていると考えられる。それを確かめるために我々は、2000年2月にサハリン沿岸からオホーツク海中部まで、海氷の密接度がさまざまに変化する経路上で、海面のアルベド、表面温度、および大気乱流熱フラックスの連続観測、同時に可視・赤外カメラによる海面の撮影を行った。寒冷海洋域での海氷の長期変動を予測するためには、海氷面積と同時に厚さの情報が必要不可欠であるが、未だ現場測定以外決定版は無い。我々は、オホーツク海沿岸の紋別市に設置したXバンドドップラーレーダを用いて、冬季には海氷観測モードで海氷面積や海氷域の短時間変動を観測している。本レーダは3次元走査が可能であるので、海氷の3次元立体表示を行ったところ、海氷域の凹凸が表示された。しかし、この凹凸が実際の海氷の凹凸にどのように対応しているかどうかは、実測が無いので確認できていない。そこで、2014年2月に航空機で海氷の凹凸を測量し、レーダ画面上の海氷域の凹凸の物理的解釈を行った。