日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-05_30PM2] 生命-水-鉱物-大気相互作用

2014年4月30日(水) 16:15 〜 17:45 419 (4F)

コンビーナ:*大竹 翼(北海道大学大学院工学研究院 環境循環システム部門)、鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、白石 史人(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)、高井 研(海洋研究開発機構極限環境生物圏研究センター)、上野 雄一郎(東京工業大学大学院地球惑星科学専攻)、長沼 毅(広島大学大学院生物圏科学研究科)、掛川 武(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、横山 正(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)、中村 謙太郎(独立行政法人海洋研究開発機構 (JAMSTEC) システム地球ラボ プレカンブリアンエコシステムラボユニット)、座長:鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、長沼 毅(広島大学大学院生物圏科学研究科)

16:45 〜 17:00

[U05-18] 表層水圏と堆積物中のヒ素の移動過程

*益田 晴恵1 (1.大阪市立大学)

キーワード:ヒ素汚染地下水, 微生物化学反応, 緑泥石, 針鉄鉱, ギブサイト

ヒ素汚染地下水は1990年代以降、世界的な問題であり、多くの研究が進められてきたが、いまだに原因が明確になっていない。表層水中あるいは帯水層堆積物のごく浅層でヒ素を含む鉱物が酸化分解して帯水層堆積物にヒ素を吸着した酸水酸化鉄が形成され、地下水の還元と同時にこれが分解してヒ素が地下水中に溶出すると考える研究者が多い。黒雲母や黄鉄鉱などはヒ素を含む原因鉱物であると指摘されてきたが、実際にこれらの鉱物中にヒ素を確認した研究は多くない。ここでは、表層水中でヒ素が運搬される過程と堆積物中でヒ素が溶出するメカニズムを考察した。 河川水中のヒ素は、溶存するものと懸濁物に吸着して運ばれるものがある。紅河では河川水中の総ヒ素濃度は~10ppbであり、溶存態と懸濁態の割合は紅河では6:4であった。紅河の河川水にはギブサイトや酸水酸化鉄が多く含まれているが、ヒ素の担体はそれらではなく粘土鉱物であった。一方、ガンジス・ブラマプトラ水系や紅河の河床堆積物中のヒ素濃度は数?15ppm程度である。泥質堆積物でヒ素濃度が高い傾向はあるが、砂質堆積物でも10ppmを超える時がある。これらの堆積物中のヒ素の大部分は難溶態物質に含まれており、砕屑性鉱物中に固定されている。私たちはバングラデシュやパキスタンのヒ素汚染地域で緑泥石がヒ素を不純物として含んでいることを明らかにしたが、河川によっては異なる砕屑性鉱物がヒ素の担体であるかもしれない。これらの結果は、表層水中に溶存するヒ素が堆積物中に移動する際には粘土鉱物による吸着濃縮は重要であるが、もっとも重要なヒ素運搬過程は砕屑性粒子の移動であることを示している。 一方、間隙水中のヒ素濃度は酸化還元電位やpHによって、比較的浅い深度で変化する。化学環境の変化には微生物活動が関与していると推定されるが、生物自体がヒ素の溶出に関わっている証拠はない。陸上の地下水帯水層では、酸化により砕屑性粒子の分解が起こる深度でヒ素の間隙水中への溶出と、酸水酸化鉄の形成とそれへのヒ素の吸着が起こる。これは一時的にヒ素を堆積物中に濃縮する反応である。しかし、大部分のヒ素は吸着しない。そのため、この部分がヒ素汚染地下水の出現にもっとも深く関わる反応である。