日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

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[U-05_30PM2] 生命-水-鉱物-大気相互作用

2014年4月30日(水) 16:15 〜 17:45 419 (4F)

コンビーナ:*大竹 翼(北海道大学大学院工学研究院 環境循環システム部門)、鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、白石 史人(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)、高井 研(海洋研究開発機構極限環境生物圏研究センター)、上野 雄一郎(東京工業大学大学院地球惑星科学専攻)、長沼 毅(広島大学大学院生物圏科学研究科)、掛川 武(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、横山 正(大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻)、中村 謙太郎(独立行政法人海洋研究開発機構 (JAMSTEC) システム地球ラボ プレカンブリアンエコシステムラボユニット)、座長:鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)、長沼 毅(広島大学大学院生物圏科学研究科)

17:15 〜 17:30

[U05-P13_PG] 土壌の微細構造と生物活動

ポスター講演3分口頭発表枠

*鈴木 茂之1服部 勉2服部 黎子2三村 佳織3石黒 宗秀4 (1.岡山大学、2.アチック・ラボ、3.兼松日産農林株式会社、4.北海道大学)

キーワード:土壌, ミクロ団粒, シリカ・ナノ粒子, 細菌

土壌は岩石圏と生物圏との境界部において、大気や水圏との作用も加わって形成されるもので、鉱物と生物が関わりあう最前線の物質とみなされる。土は極めて微細な粒子からなり、そこに住む細菌たちも微細であるため、これらの解明は困難を極めるが、多様で豊かな微生物世界が存在する(服部,1987)。粘土粒子の形成が、鉱物の機械的な細粒化だけではなく、細菌の活動が関わる結晶作用があることも示唆されて来ている(服部,2006)。生物の活動と土壌形成の相互作用について、微細構造の観察をもとに検討した。土壌の試料は岡山大学圃場、岡山大学構内沖積土層水田土壌(弥生時代~近世)、仙台市近郊沖積土層、バングラデシュDhaka近郊沖積土層泥炭質古土壌(約3000年前)を用いた。ミクロ団粒の産状はFitzPatrick(1993)と同様な方法で、不撹乱土壌試料から偏光顕微鏡用薄片を作成して観察した。シリカ・ナノ粒子の観察には電子顕微鏡を用いた。
ミクロ団粒形成:岡山大学圃場の畑作土壌は団粒状の構造が認められる。1~2mm程度のマクロ団粒は砂サイズの鉱物や岩石片の他、主に泥サイズ以下の粒子からなる。泥サイズの粒子は0.05~0.3mm程度の団粒をなしている様子がしばしば識別できる。この団粒はミクロ団粒とみさされ、マクロ団粒がミクロ団粒の集合によって形成されていることを示す。岡山大学構内の弥生時代から近世の水田土壌においては、マクロ団粒は識別出来なかったが、0.1~0.5mm程度のミクロ団粒に相当すると考えられる粒状の組織が認められる。Dhaka近郊の古土壌は耕作土ではないと推測されるが、同様のミクロ団粒と考えられる構造が認められる。個々のミクロ団粒はお互いに癒着し境界が不明瞭な場合が多いが、腐植質泥の含有量・鉱物や岩石片の割合・二酸化マンガンや水酸化鉄などの沈着物の有無や程度などによる組成の違いによって識別できる。伴われる構造として、根の跡などの生物擾乱が顕著で、乾裂と推測される亀裂も多い。このような構造はFitzPatrick(1993)など多くの研究で明らかにされているように、天候などの表層環境の変化のほか生物の活動による影響が大きいことがわかる。
シリカ・ナノ粒子の形成:一次粒子表面を電子顕微鏡で観察すると、etch pitなど極微小な穴や溝が形成されている。このような融解した構造のほか、極微細な鉱物の形成も認められる。また細菌の周辺に鉱物が形成した様子も認められる。これらのことかから、土壌の主要構成物である泥サイズの粒子は、物理的細粒化、化学的結晶作用によるほか、細菌を媒介としたシリカ・ナノ粒子の形成によるものも含まれると推測される。
FitzPatrick, E.A. (1993) Soil Microscopy and Micromorphology, Wiley
服部 勉 (1987) 大地の微生物世界,岩波新書
服部 勉 (2006) 土と微生物, 60(2), 105-107