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[U06-15] はやぶさ帰還試料キュレーション状況の報告
キーワード:はやぶさ, 小惑星, キュレーション, サンプルリターン
2010年6月、小惑星探査機「はやぶさ」はS型地球近傍小惑星イトカワより表層粒子試料を地球に帰還させた(Abe et al., 2011)。それ以降、JAXAキュレーションチーム(ESCuTe)では、「はやぶさ」のサンプルキャッチャーからの粒子の回収・記載を進め、現在の所、400個超の粒子が初期記載済みとして公表されている(Yada et al., 2014a)。本発表では、その回収・初期記載と試料の配付・研究の現状と今後の予定についてまとめる。 帰還した探査機「はやぶさ」の再突入カプセルから取り出されたサンプルコンテナは、JAXAキュレーションセンター(ESCuC)のクリーンルームにおいて洗浄・分解の末、真空環境のクリーンチェンバー第1室で開封され、イトカワ表層物質を収めたサンプルキャッチャーが取り出され、試料のハンドリングを行う高純度窒素環境のクリーンチェンバー第2室へ移された。サンプルキャッチャーは主に、捕獲試料が通過する回転筒と、2回目のタッチダウンの際に捕獲された試料を収めるA室と、1回目のタッチダウン捕獲試料を収めるB室からなる。当初、試料を取り出す為にそれぞれキャッチャーA、B室のフタと同じサイズの合成石英ガラス製の円盤を準備し、そのガラス円盤の上にキャッチャーに振動を与えて内部の粒子を落下させることで回収を行っていた。そのガラス円盤状から、専用に開発した静電制御マイクロマニピュレーターを用いて、一つ一つ電子顕微鏡用密閉型試料ホルダー上に移動して、SEM-EDSで記載を行い、クリーンチェンバー第2室内のグリッドを切った合成石英ガラス板上に移動し、粒子IDを付けて保管している(Yada et al., 2014b)。このガラス円盤の他に、2013年度にはキャッチャーB室のフタを、専用の電子顕微鏡用密閉型ホルダーに設置してSEM-EDSによりフタ上の粒子を直接記載している。 ガラス円盤を用いた方法は、粒子を記載する為にマニピュレーターで1個ずつ移動させる手間とリスクを伴う。この手間とリスクを解消する為、我々は2013年度にキャッチャーA、B室フタと同サイズで、専用の電子顕微鏡用密閉型ホルダーに設置して直接SEM-EDSによる記載が可能な、メタルディスクを開発した。2014年度よりこのディスクによる粒子回収を開始し、最終的には2年強をかけてキャッチャー内の粒子の全容を把握する予定である(Yada T. et al., 2014a)。 JAXA/ESCuTeでは、2012年初頭より全世界の研究者より「はやぶさ」帰還試料について研究プロポーザルを募集し、外部専門家から成る委員会による審査を経て選ばれたプロポーザルに対して試料を配付する、国際公募研究を開始した。現在までほぼ1年に1回のペースで行われており、第3回目の公募が2014年度より開始する予定である。国際公募研究の成果は、2013年より始まったJAXAが主催する国際シンポジウム(Hayabusa 2013: Symposium of Solar System Materials)にて発表され、抄録が国際誌にまとめられる予定である。 また、希少な特徴を持ち、国際公募研究に供する事が難しい試料について、JAXA/ESCuTeの取り纏めの元に2013年よりコンソーシアム研究を開始している。現在の所、最大サイズケイ酸塩粒子、塩を含むケイ酸塩粒子、硫化鉄粒子、リン酸塩を含む粒子の4種類について、コンソーシアム研究が進められている(Uesugi et al., 2013; Yada et al., 2013; Karouji et al., 2013)。今後も別の希少な特徴を持つ試料について、コンソーシアム研究を開始する予定である。参考文献:Abe M. et al. (2011) LPS XLII, Abstract #1638.Karouji Y. et al. (2013) 76th Ann. Meteorit. Soc. Meeting, Abstract #5148.Uesugi M. et al. (2013) 76th Ann. Meteorit. Soc. Meeting, Abstract #5186.Yada T. et al. (2013) 76th Ann. Meteorit. Soc. Meeting, Abstract #5150.Yada T. et al. (2014a) LPS XLV, Abstract #1759.Yada T. et al. (2014b) MAPS, in press.