日本地球惑星科学連合2014年大会

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[U-06_28PO1] 太陽系小天体研究の新展開

2014年4月28日(月) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*荒川 政彦(神戸大学大学院理学研究科)、中本 泰史(東京工業大学)、渡邊 誠一郎(名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻)、安部 正真(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、石黒 正晃(ソウル大学物理天文学科)

18:15 〜 19:30

[U06-P21] 太陽系小天体の発見観測と位置観測に特化した可視広帯域フィルターの開発と性能評価

*奥村 真一郎1西山 広太1浦川 聖太郎1坂本 強1高橋 典嗣1吉川 真2 (1.日本スペースガード協会、2.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:可視, 太陽系小天体, 光害, 広帯域フィルター

太陽系小天体のように太陽光を反射して光る天体の発見観測、位置測定観測に特化した可視広帯域フィルターを設計、製作し評価を行った。「Wi」フィルターと名付けた新設計のフィルターは市街光、特に水銀やナトリウムの輝線の影響を減らす設計となっている。(1)人工光の多くはVバンド帯の波長に集中していること、(2)太陽光スペクトルの「フォトン数」のピークは6350Åにあること、(3)多くの小惑星は可視光の波長範囲において7000Å前後に反射率のピークがある事、を理由に新フィルターのカットオン波長はSchottのガラスフィルター「OG590」を使用することにより5880Åに設定した。一方、カットオフ波長はOH夜光の影響、9400Åにある水蒸気の吸収帯を考慮して9400Åとし、これは干渉膜により仕様を満たす。
これまで使用していた、市販品の波長カットフィルター(Wフィルター、4900-9100Å)を使用する場合と比べ、Wiフィルターにより空の明るさは人工光の影響の場合のみならず月明かりの散乱光に対しても10-20%減らすことが出来た。小惑星観測時において、Wフィルターと比べてWiフィルターは透過波長範囲を16%狭くしているにもかかわらずWiフィルターの使用により小惑星の出力フラックス値は3% 増えた。結果、Wiフィルターの使用により小惑星観測時の信号対雑音比を平均で6%向上させることができた。完全空乏型CCDのように長波長側で感度の高いCCDを使用する場合にはさらに大きな改善が見られると思われる。

参考:
Wide-Band Optical Filter Optimized for Deep Imaging of Small Solar-System Bodies,
Okumura et al. Publications of the Astronomical Society of Japan, 64, 47 (2012)