日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-07_1AM1] Future Earth - 持続可能な地球へ向けた統合的研究

2014年5月1日(木) 09:00 〜 10:45 501 (5F)

コンビーナ:*氷見山 幸夫(北海道教育大学教育学部)、中島 映至(東京大学大気海洋研究所)、安成 哲三(総合地球環境学研究所)、植松 光夫(東京大学大気海洋研究所)、座長:氷見山 幸夫(北海道教育大学教育学部)

10:20 〜 10:45

[U07-04] 海洋生態系サービスの保全と持続可能な利用に関する国際ガバナンスの現状

*八木 信行1 (1.東京大学大学院農学生命科学研究科)

キーワード:生態系サービス, 国連海洋法条約, 生物多様性条約, 国連食糧農業機関

海の恵み(すなわち海洋の生態系サービス)を国際社会が適切に管理し、最適利用することが国際的な課題となっている。実際、生物多様性条約(CBD)においてはEBSA(Ecologically or Biologically Significant Areas)に関する議論が、また国連食糧農業機関(FAO)においてもVME(vulnerable marine ecosystem)に関する議論がなされ、生物多様性の保全上重要度が高い海域の抽出などが進みつつある。これらは、既存の枠組みの中で法的拘束力を伴わない海域保全の枠組みを議論している性格であるが、加えて、公海域における生物多様性を保全と持続可能な利用を行うための国際条約を交渉するか否かに関して議論する作業部会が、国連で逐次開催されている。作業部会の正式名は「General Assembly Ad Hoc Open-ended Informal Working Group to study issues relating to the conservation and sustainable use of marine biological diversity beyond areas of national jurisdiction」であり、結論を第69回国連総会(2014年の冬)の終会までに出すこととされている。 しかしながら、これらの国際的な議論は、漁業操業を規制することだけに焦点が当たっており、海洋生態系や生態系サービスそのものを保全するとの視点が欠けている点が問題であると考える。ただし、生態系サービスを保全するために法的な管理を実施するとすれば、誰によるどのような活動を管理するか特定する必要があり、公海の場合は様々な人的活動(陸上期限もののも含めて)存在しているため、この特定作業が簡単ではないとの問題も生じる。むしろ法学的なコントロールよりも生態系への支払いといった経済的な手法を検討することが有効である可能性も考えられる。