日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

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[U-07_1PM2] Future Earth - 持続可能な地球へ向けた統合的研究

2014年5月1日(木) 16:15 〜 18:00 501 (5F)

コンビーナ:*氷見山 幸夫(北海道教育大学教育学部)、中島 映至(東京大学大気海洋研究所)、安成 哲三(総合地球環境学研究所)、植松 光夫(東京大学大気海洋研究所)、座長:植松 光夫(東京大学大気海洋研究所)

16:15 〜 16:35

[U07-13] アジアの経済発展と地球環境の持続性

*杉原 薫1 (1.政策研究大学院大学)

キーワード:アジア, 経済発展, 地球環境の持続性, 径路依存性

過去20年ほどのあいだに、成長アジアは、世界でもっとも多くの資源・エネルギーを輸入する地域になってしまった。いわゆる無資源国だけではなく、かつての資源国もほとんどが資源の輸入国に転じたからである。他方、東アジアでは、欧米を中心に発達した資本集約的・資源集約的な工業化がそのまま移植されたのではなく、比較的労働集約的で資源節約的な技術が発達してきたので、エネルギー集約度(GDP1単位を産出するためのエネルギー消費量)は低い傾向にあった。日本のエネルギー節約型技術は現在でも世界をリードする水準にある。こうして、東南アジア、南アジアを含む広域アジアは、いまや生産者としても消費者としても世界の資源・エネルギーの需給関係を規定する存在になりつつある。 言うまでもなく、モンスーンアジアは、ヒマラヤ山脈を焦点とする、地球最大の水・熱循環を作り出しており、そこに世界人口のほぼ半分が居住している。それは、熱帯・温帯といった区分を超える、文明と経済の大きなまとまりを歴史的に形成してきた。現在では、この地域が全面的に工業化・都市化しつつあり、そこでの資源・エネルギー利用が世界経済の動きを律しはじめているのである。アジアの経済発展は地球環境の持続性にどのような影響を与えてきたのか。また、アジア地域が長期にわたって、固有の環境のなかで形成してきた経済発展径路は、それが地球環境全体に影響を及ぼし始めたとき、その将来をどのように規定するのであろうか。本報告では、この問題についての内外の歴史研究の成果を要約しつつ、現在の認識水準を共有したい。 なお、私は、現在日本学術会議「フューチャー・アースの推進に関する委員会」において、人文・社会科学がどのように貢献できるのかを考える立場にある。本連合の会員との交流をつうじて文理融合型研究の可能性を探ることができれば幸いである。