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★ [U08-06] 地理空間情報を用いた災害対応支援活動
キーワード:地理空間情報, GIS, 災害対応支援活動
災害時の対応作業を支援するアプリケーションやサービスはどのように変化してきたのだろうか。巨大災害発生の時期とともに追ってみた(図参照)。1995年の阪神・淡路大震災時には,GUIの黎明期と重なっていることから,複数ウインドウを開き,情報を可視化するアプリケーションが注目を集めた。特に,地理空間情報(位置情報)を中心にデータを管理する地理情報システム(GIS:Geographic Information System)は,研究機関が積極的に利用したことや行政機関が災害対応業務に利用した例もあり,普及が促進された。また,地図データ作成のための航空写真を利用した被災状況把握の試みがなされ,高解像度衛星画像の利用の可能性も指摘された。震災以降は,インターネットプロバイダーも増加し,利用が安価で簡単になったことを受けて,自治体がホームページを開設し,様々な情報が発信されるようになった。2004年に発生した中越地震では,このWeb2.0を代表するサービスであるブログにより避難所の情報などが発信された。また,1998年ごろに提案され,Web2.0の後押しもあり普及の兆しを見せていたWebGISを情報共有のためのプラットフォームとして利用した情報発信も国土地理院や民間NPOなどから行われた。これらのサービスの背景データとして,地図だけでなく衛星写真や航空写真が積極的に利用された。2005年にGoogle Earthが頒布され,2006年にはクラウドコンピューティングが提唱されたことを機に,さらに変化が訪れる。2007年には,地理空間情報活用推進基本法が施行されたことを受け,空間情報の取得としてGPSなどの衛星測位システムが活発に利用され,GISで取り扱うデータが飛躍的に増えた。東日本大震災では,カーナビゲーションシステムのサービス向上のために収集されているプローブ情報(各車両の位置情報)をデータソースとした道路通行実績が提供され,標準プロトコルを介してWeb上に公開されており,様々な機関のWebGISで閲覧,利用することが可能となった。1980年代前半から開発がすすめられていたオープンソースGISを用いて,2010年のハイチ地震ではOpenStreetMapプロジェクトによるクライシスマッピングの試みが行われている。これは被災地の地図情報をインターネット上でボランタリーに整備するプロジェクトであり,GISの整備があまり進んでいない被災地の支援に新たな可能性を見せた。以上のように,阪神・淡路大震災以降の個人利用のコンピュータ及び周辺環境の変化により,平常時の防災活動や災害時の対応活動における情報の収集,作成,分析は,行政や専門機関のみが行うものから,非専門家も行うことができるものに転換してきた。さらに,今後は,Web空間上に玉石混淆の情報があふれかえるビッグデータ時代を迎えることが予測されており,災害時に情報がないという状態から,災害時には情報であふれかえり,かえって混沌とする状態に移行することが予測される。