日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-08_2AM2] 連合は環境・災害にどう向き合っていくのか?

2014年5月2日(金) 11:00 〜 12:45 メインホール (1F)

コンビーナ:*松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境科学専攻)、須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)、石原 正仁(京都大学学際融合教育研究推進センター極端気象適応社会教育ユニット)、小荒井 衛(国土地理院地理地殻活動研究センター地理情報解析研究室)、座長:石原 正仁(京都大学学際融合教育研究推進センター極端気象適応社会教育ユニット)

11:30 〜 11:45

[U08-10] 湖沼生態系での環境放射性物質のストックとフロー

*野原 精一1 (1.独立行政法人国立環境研究所)

キーワード:福島第一原発事故, 環境放射能, 湖沼生態系

赤城山頂部の大沼(おの)は、湖水面標高1,345 m、湖水面積0.87 km2、集水域面積4.185 km2のカルデラ湖である。冬季の12月中に完全結氷し、春季の4月中に解氷する。主な流入河川は覚満川のみで、湖岸には幾つかの湧水があり、流出は沼尾川と赤城大沼用水のみである。湖水の平均滞留時間は約2.3年である。生息する魚類は、ワカサギ、ウグイ、オイカワ、コイ、イワナ、ヨシノボリなどが確認されている。 2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故により、多量の放射性物質が大気中に放出され、福島原発から190 kmはなれた赤城大沼周辺にも放射性物質が降下した。当時の流域は多くが積雪に覆われ、雪解け時に大部分の放射性物質が湖沼に流れ込んだ。湖内に生息するワカサギの放射性セシウム濃度は、2011年8月時で当時の食品の暫定規制値(500 Bq/kg)を越える640 Bq/kgであった。原因究明と将来予測に基づいた対策が急務となり、群馬大学・群馬県水産試験場・国立環境研究所および武蔵大学とで環境省の環境研究総合推進費を使って2年間にわたり共同研究を進めてきた。 本調査の内容は、①降下した放射性セシウムによる土壌汚染の状況評価とその経年変化の観測、②赤城大沼における湖水、周辺土壌、湖沼底質、さらに魚類を含む水生生物の放射性セシウムによる汚染状況評価とその経年変化の観測、③赤城大沼の陸水学・水文学的調査および湖沼生態系の放射性セシウム汚染の基礎となる食物網の解明、などである。 その後徐々に減少して、1年後の2012年8月時には210 Bq/kg、2年後の2013年8月時には130 Bq/kg、そして最終測定値は99 Bq/kg(2014年1月時現在)となっている。湖水137Csレベルとワカサギ中137Csレベルは高い相関を示し、その濃縮係数は約1400である。動物プランクトンには10~150 Bq/kg、湖水0.10 Bq/L、底質1000~2,500Bq/kg-dryの大量の放射性セシウムが底質と湖水に蓄積し、そのうち5g/m2/dayの沈殿物が沈降して1,000Bq/m2/dayが循環していると考えられる。