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★ [U08-16] 火山学は環境・災害にどう向き合っていくのか?
キーワード:火山学, 火山災害, ?災
火山災害は水害や土石流災害,地震災害と比べて低頻度である.しかし,いったん火山噴火が発生した場合,その被災範囲は他の災害に比べてはるかに広範囲に及ぶこともある.火山噴火は防止することは不可能であるので,災害から生命をまもり,経済活動の損害を最小にするためには,火山噴火の時期や規模,様式,推移を適切に判断し,適切な時期に避難等の防災行動を促すことである.このためには火山学の発展が直接的に有効である.また,火山噴火のメカニズムが完全に理解できない段階でも火山学の知見が減災に有効であるという側面がある.この観点から,わが国の火山研究者は火山噴火予知連絡会や地方の火山防災協議会等において,火山災害軽減に貢献してきた.火山災害の軽減には,火山周辺の住民・行政が火山噴火についての正しい知識を身につけていることが有効である.また,適切なハザードマップと避難計画が整備され,日常的に避難訓練が繰り返されていることが,住民の火山に対する関心を保つために重要である.特に,わが国の行政において,防災担当者が2年程度で交代するという現状では,行政レベルでの火山噴火・災害に関する啓発活動や図上避難訓練などを定期的に繰り返すことの意味は大きい.このような場面で火山専門家としての火山学会員の役割は重要である.最近,原子力発電所の立地に関するガイドラインに火山噴火が取り入れられた.わが国のような火山国でありながら,これまで考慮されることのなかった火山噴火に関するガイドラインが取り入れられたことは重要である.しかし,あまりに拙速に導入されたこともあり,問題も多い.わが国では国土が壊滅的な被害を受ける可能性もある超巨大噴火も1万年に1回の頻度で発生する.このような現象が原発の立地や放射性廃棄物の処理にどのような影響を及ぼすのかは明確になっていない.また,この事実が必ずしも国民に周知されているわけではない.このような地学的環境の中でエネルギー政策も含め,どのような方向を目指すべきかの意思決定に火山学,地球科学の果たす役割と責任は大きい.しかし,これまでのところ,これらへの対応は学会としてではなく,個人研究者としておこなわれている.学会としてどこまで関与するかについては共通の理解があるわけではない.日本火山学会では,学会内に常設の防災委員会を設置し,学会としてどこまで関与すべきかを含めて検討を行おうとしている.