日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

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[U-08_2PM1] 連合は環境・災害にどう向き合っていくのか?

2014年5月2日(金) 14:15 〜 15:15 メインホール (1F)

コンビーナ:*松本 淳(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理環境科学専攻)、須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)、石原 正仁(京都大学学際融合教育研究推進センター極端気象適応社会教育ユニット)、小荒井 衛(国土地理院地理地殻活動研究センター地理情報解析研究室)、座長:須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)

15:00 〜 15:15

[U08-18] 宇宙災害と宇宙天気研究

*菊池 崇1 (1.名古屋大学太陽地球環境研究所)

キーワード:宇宙天気, 磁気嵐, 誘導電流, 宇宙放射線, 衛星障害, 大規模停電

現在の宇宙利用時代において衛星による通信、放送、測位が社会活動、経済活動に欠かせない。また、宇宙ステーションにおける有人宇宙活動が実施されている。これら衛星の半導体機器や太陽電池パネルは、太陽フレア高エネルギー粒子や磁気圏放射線帯粒子などの宇宙放射線により誤動作や劣化を受け、一時的な衛星の機能停止や回復不能な事故に見舞われる。また、太陽フレアX線による電離圏異常電離(デリンジャ-現象)による船舶航空無線・海外放送の途絶、磁気嵐による電力送電線・海底ケーブル電源線誘導電流障害、電離圏嵐による衛星測位誤差や衛星画像劣化、そして超高層大気の加熱による衛星軌道・姿勢障害など多様な障害が発生する。1989年3月の磁気嵐時には、磁気嵐誘導電流によりカナダで大規模停電が発生し、同年10月には北海道で赤色オーロラが発生するとともに我が国の送電線でも強い誘導電流が確認された。1994年2月の冬季オリンピックの最中には衛星放送が中断し、2000年7月にはわが国の科学衛星が大気加熱の影響を受けて姿勢制御不能になる事故が発生した。その後も、衛星放送の中断、地球観測衛星や気象衛星の不具合など、宇宙放射線の影響と見られる事故が発生している。我々は2011年3月の大震災以降、数100年から1000年に一度という巨大事象でさえ身近に起こるという事実を目の当たりにした。宇宙災害においても、1859年に発生したCarrington事象では、1989年3月の大規模停電を引き起こした磁気嵐の数倍の規模の磁気嵐が発生し、当時の先端技術であった有線通信網に甚大な被害が発生している。現代のハイテク時代に同規模の磁気嵐が発生すると、その被害は甚大なものになる。宇宙科学分野の学会や研究集会において、極端宇宙事象を含む宇宙天気の変動に際して起こりうる宇宙災害に対する備えを念頭に、太陽フレアの予測や、磁気嵐、電離圏嵐、そしてその結果発生する宇宙放射線や誘導電流などを定量的に推定する研究を実施している。本講演では、宇宙災害の概略と事象の予測を可能にする研究の現状を紹介する。