日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL39] 地球年代学・同位体地球科学

2015年5月24日(日) 11:00 〜 12:45 A03 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、佐野 有司(東京大学大気海洋研究所海洋地球システム研究系)、座長:佐野 有司(東京大学大気海洋研究所海洋地球システム研究系)、田上 高広(京都大学大学院理学研究科)

11:15 〜 11:30

[SGL39-09] 後期完新世層からの木炭の14C年代測定のためのABA洗浄の再検証

*渥美 晋1 (1.東京理科大学大学院総合化学研究科)

キーワード:14C 年代測定法, 後期完新世, 酸-アルカリ-酸 処理法, フミン酸, 三次元蛍光分光測定法

放射生炭素年代測定法は地球科学や考古学で広く応用されている.特に考古学の分野では数十年単位の高精度測定が求められている.同測定法は発展初期から外部有機炭化物の混入による14C年代値への影響が疑われ、解明が続けられてきた.しかし,どのような化学的処理条件が最も適当であるかという議論は未だに決着していない.また,外部有機物とフミン化した木炭自体とを区別する確実な化学的方法は今のところ技術的に存在しない.一方,我々は木炭のNaOH溶液に対する抵抗性は埋没状況や保存状態によって異なることを経験的に知っている.したがって,多くの研究者は木炭のアルカリ耐性が低い時には低濃度NaOH溶液を使っている.慣習的ABA法の謎は,どの程度の濃度のNaOH溶液が最も14C年代測定試料に対して有効かということである.現在この問題に関して統一見解は無い.すなわち,信頼できる14C年代値を得るために適切な試料選択条件および前処理条件が求められる.しかしながら,我々が知る限り,ABA処理条件に関する詳細なデータと研究はほぼ無い.
 本研究では,我々はABA法のアルカリ抽出の最適条件を探るため.異なる濃度のアルカリ溶液による薄い濃度から順に行う5段階洗浄を試みる.我々は洗浄各段階の木炭の14C年代値の比較および各段階の抽出溶液中の溶存有機物の蛍光強度および吸光光度による比較を行い,ABA法の問題点と現実的打開策を明らかにすることを狙う.14C年代測定と吸光光度測定および三次元蛍光測定結果から,従来の常識とは異なって溶液の色とフミン酸の蛍光強度との間には相関が無いことが判明した. 加えて,どの濃度で高いフミン抽出効果が得られるか予測できないことから,0.001mol/Lの低濃度溶液から1.2Mまでの多段階抽出が必要であり,かつ短時間(18-20日)において高効率でフミン酸抽出を促進することが可能であることが判明した.最後に,14C年代値はNaOH溶液の濃度1-2mol/Lの間で収束または飽和したことを示している.また,異なる8つのNaOH溶液の濃度でアルカリ洗浄した場合,1.2mol/Lで年代値が最も収束した.本研究の結果から,0.001,0.01,0.1,1.0,1.2mol/Lの5段階のアルカリ洗浄を推奨する.今回,我々は14C年代測定法の問題点を体系的に論じる.