日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG58] 岩石・鉱物・資源

2015年5月25日(月) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*三宅 亮(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地質学鉱物学教室)、角替 敏昭(筑波大学生命環境系)、藤永 公一郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、土谷 信高(岩手大学教育学部地学教室)

18:15 〜 19:30

[SCG58-P11] 南インドのゴンドワナ大陸衝突帯にみられるざくろ石単斜輝石岩の温度圧力経路

*矢野 美波1角替 敏昭2飯沼 美奈子2M Santosh3 (1.筑波大学地球学類、2.筑波大学生命環境系、3.中国地質大学)

キーワード:グラニュライト, 温度圧力経路, ゴンドワナ

原生代最末期のゴンドワナ大陸集合時の大陸衝突によって形成された造山帯である東アフリカ-南極造山帯は、現在のマダガスカル、インド、スリランカ、東南極地域に広く分布している。特にモザンビーク海の閉塞にともなう海洋プレートの沈み込み→付加→最後の大陸衝突によって形成された縫合帯は、インドのPalghat-Cauvery 縫合帯から東方のスリランカ・ハイランド岩体に延長すると考えられている(Santosh et al.,2014)。一方でその縫合帯の西方への延長はマダガスカルにつながると考えられているが、その詳細は不明である。この縫合帯の主な岩相は、酸性-中性の正片麻岩、苦鉄質グラニュライト/角閃岩、泥質グラニュライト、珪岩/縞状鉄鉱層、苦鉄質-超苦鉄質複合岩体(オフィオライト)などであるが、縫合帯の外側の岩体(主に高度変成作用を受けた正片麻岩および準片麻岩からなる)との大きな違いは、断片状に産出するオフィオライト岩体および変ハンレイ岩体などの苦鉄質-超苦鉄質岩体の存在である。この中で後者の変ハンレイ岩体は主に粗粒のざくろ石、単斜輝石からなり、微量の斜長石、石英、斜方輝石、チタン鉄鉱などから構成されているエクロジャイト的な岩石である。この変ハンレイ岩(ざくろ石単斜輝石岩)は、南インド中央部のPalghat-Cauvery縫合帯(Nishimiya et al., 2008; Saitoh et al., 2011; Koizumi et al., 2014)、スリランカ・ハイランド岩体(Osanai et al., 2006; Takamura et al., 2014)、東南極リュツォ・ホルム岩体(Saitoh et al., 2012)の限られた地域からのみ報告されている。しかし、南インドの西部では発見されておらず、これがPalghat-Cauvery縫合帯の西方延長を議論する上での妨げとなっている。ざくろ石単斜輝石岩は様々な年代の海洋プレートの断片と考えられるため、その原岩および変成作用の広域的な比較は、ゴンドワナ大陸集合時の海洋の閉塞や最終的な大陸衝突のテクトニクスを考察する上で重要である。本研究では、特に南インド西部のワイナード地域から新たに得られたざくろ石単斜輝石岩に注目し、その岩石学的な特徴および変成温度圧力条件について報告する。
 ワイナード地域から採集したざくろ石単斜輝石岩は、変センリョク岩中に1m程度のブロックとして産出する。鉱物組み合わせは、ざくろ石+単斜輝石+チタン鉄鉱+斜長石+石英である。後退変成作用の生成物として、普通角閃石がみられる。粗粒なグラノブラスチック組織を呈し、顕著な変形構造はみられない。ざくろ石-単斜輝石-斜長石-石英地質温度圧力計を適用して得られた温度条件は、680-710℃程度、圧力は約9 kbarであった。この条件は、南インド中央部のPalghat-Cauvery縫合帯から得たピーク変成条件(>14 kbar, >850℃)に比べて、温度・圧力ともに極めて低い。
 近年の岩石学的研究により、Palghat-Cauvery縫合帯のようなモザンビーク海の閉塞とその後の大陸衝突によって形成された縫合帯には、様々な年代をもつ岩石がブロック状に取り込まれ、メランジを形成している。例えばPalghat-Cauvery縫合帯にみられる苦鉄質-超苦鉄質岩体(オフィオライトや層状貫入岩体)は、(1) 25億年前の火成および変成年代をもつ岩体、(2) 25億年の火成年代と7-8億年の変成年代をもつ岩体、(3) 7-8億年の火成年代と5億年の変成年代をもつ岩体の3つが混在しており、これらのピーク変成条件や温度圧力履歴は異なる。今回、南インド西部のワイナード地域から得られたざくろ石単斜輝石岩の温度圧力履歴は過去の3つのタイプには当てはまらず、全く異なる温度圧力経路および時代の岩体である可能性がある。