18:15 〜 19:30
[SSS26-P01] 真の極小に収束する波形インバージョン法:ウィーナーフィルターの活用
キーワード:逆問題, 地震波形, ウィーナーフィルター, 真の極小, 位相の任意性
波形インバージョンは現在では地震学に限らず、地球惑星科学の幅広い分野で応用、さらにはルーチン的な大量あるいは自動処理が行われている。そこでは、時間領域の観測波形と合成波形の差を最小二乗法的に評価し、モデルを修正していく。しかし、山谷がある波形は一つずれると最小二乗的な誤差は周期的に繰り返す、すなわち、いくつものローカルな極小が存在し、インバージョンの過程で本当の極小でないモデルへ収束してしまうことが多い。数学的には位相の2πの任意性による。この問題点を処理する過程はphase unwrappingと呼ばれ、扱う問題に応じて、経験的なアプローチしかこれまで知られていない。
本研究ではこの問題点を解消するために、二段階からなる新しいインバージョン法を提案する。まず、観測波形d(t)と合成波形 p(t)(離散型の時系列とする)との違いを、ウィーナーフィルターw(t)によって表す。p(t)*w(t)–d(t)の二乗和が最小になるようにw(t)の係数を求めるが(*は畳み込み)、これは再帰的解法から効率よく求められる(Levinson, 1949)。モデルが最適ならば観測波形と合成波形が一致するので(p(t)=d(t))、w(t)はt=0が1で他は0のユニットフィルターとなる(連続変数ではデルタ関数に対応)。よって、時間ラグの重みをかけたt・w(t)の二乗和を最小にする基準で、モデルを修正すればよい(ただし、w(t)の絶対値に依存するので、規格化した二乗和を用いる)。
この基準ではt=0からの時間差だけが最適化モデルへの基準として用いられるので、従来の手法での位相の任意性は関係がなく、真の極小値(最適モデル)へ反復すれば収束する点が重要である。
波形インバージョンでは順問題の形式をきちんと逆変換(離散的な形式ならば逆行列)を行うのは膨大な計算が必要なので、随伴行列(adjoint operator)をデータ残差d(t)-p(t)に掛けたものをモデル修正値として求める。この随伴行列は基準となるt・w(t)の二乗和を合成波形p(t)で偏微分して得られる。すると、随伴行列は- t2w(t)2*p(t)-1となる。つまり、t・w(t)の二乗和をp(t)で畳み込みの逆操作(deconvolution)をすればよく、他の操作は従来の波形院バージョンと同じである。
この手法を簡単な速度変動を与えたモデルで数値実験した所、十分に密な観測点・震源ペアがなくとも、従来の波形インバージョンで求めた結果よりも元のモデルを再現した。これは位相の任意性によるローカルな極小にトラップされず、真の極小へこの手法ならスムーズに収束することを示す。特に、初期モデルが最適モデルからかなりずれた場合のテストでも、元のモデルに近づく結果となり、実用面で有効であることが示された。
本研究ではこの問題点を解消するために、二段階からなる新しいインバージョン法を提案する。まず、観測波形d(t)と合成波形 p(t)(離散型の時系列とする)との違いを、ウィーナーフィルターw(t)によって表す。p(t)*w(t)–d(t)の二乗和が最小になるようにw(t)の係数を求めるが(*は畳み込み)、これは再帰的解法から効率よく求められる(Levinson, 1949)。モデルが最適ならば観測波形と合成波形が一致するので(p(t)=d(t))、w(t)はt=0が1で他は0のユニットフィルターとなる(連続変数ではデルタ関数に対応)。よって、時間ラグの重みをかけたt・w(t)の二乗和を最小にする基準で、モデルを修正すればよい(ただし、w(t)の絶対値に依存するので、規格化した二乗和を用いる)。
この基準ではt=0からの時間差だけが最適化モデルへの基準として用いられるので、従来の手法での位相の任意性は関係がなく、真の極小値(最適モデル)へ反復すれば収束する点が重要である。
波形インバージョンでは順問題の形式をきちんと逆変換(離散的な形式ならば逆行列)を行うのは膨大な計算が必要なので、随伴行列(adjoint operator)をデータ残差d(t)-p(t)に掛けたものをモデル修正値として求める。この随伴行列は基準となるt・w(t)の二乗和を合成波形p(t)で偏微分して得られる。すると、随伴行列は- t2w(t)2*p(t)-1となる。つまり、t・w(t)の二乗和をp(t)で畳み込みの逆操作(deconvolution)をすればよく、他の操作は従来の波形院バージョンと同じである。
この手法を簡単な速度変動を与えたモデルで数値実験した所、十分に密な観測点・震源ペアがなくとも、従来の波形インバージョンで求めた結果よりも元のモデルを再現した。これは位相の任意性によるローカルな極小にトラップされず、真の極小へこの手法ならスムーズに収束することを示す。特に、初期モデルが最適モデルからかなりずれた場合のテストでも、元のモデルに近づく結果となり、実用面で有効であることが示された。