日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM25] 太陽圏・惑星間空間

2015年5月25日(月) 11:00 〜 12:45 202 (2F)

コンビーナ:*徳丸 宗利(名古屋大学太陽地球環境研究所)、中川 朋子(東北工業大学工学部情報通信工学科)、座長:徳丸 宗利(名古屋大学太陽地球環境研究所)

12:00 〜 12:15

[PEM25-12] サイクル22-24の太陽風速度のグローバル分布に見られる南北非対称性

*徳丸 宗利1藤木 謙一1里中 大紀1下山 智也1中野 裕文1 (1.名古屋大学太陽地球環境研究所)

キーワード:太陽風, 惑星間空間シンチレーション, 太陽活動周期, 太陽磁場, 太陽圏, 宇宙天気

太陽活動の非対称性は、ダイナモ機構の観点から重要である。何故なら軸対称な自己励起ダイナモは存在しないためである(Cowling, 1933)。このため、太陽表面の様々な現象について太陽活動の南北非対称性が研究されてきた。その一方、南北非対称な太陽活動による太陽圏の影響については観測手段が限られているため、これまであまり解明されていない。太陽圏の非対称性は、宇宙線の伝搬や宇宙天気の影響の観点から重要である。そこで我々は、名古屋大学太陽地球環境研究所(STE研)の惑星間空間シンチレーション(IPS)観測を使って、はグローバルな太陽風速度の分布に見られる南北非対称性について調査した。IPS観測では、Source Surface上の太陽風速度の全球的分布を太陽自転周期毎に調べることができる。ここで調査した期間は1985~2013年(但し2010年を除く)であり、これはサイクル22から24に相当する。我々はSTE研のIPS観測データを南北半球にわけて、低速風・高速風・中速風について流源面の面積を求めた。解析期間を通じて見たとき、いずれの速度の太陽風でも標準偏差を上回る南北非対称性は存在していないが、高速風と低速風では大きな標準偏差が見られた。各期間について見ると高速風。低速風の南北非対称が増大していることがわかる。特に、極域(70度以上)では顕著な南北非対称性が太陽極大期に発生している。この極大期の南北非対称には北極が南極に比べ1年程度先行する特徴があることが解析から明らかになった。即ち、極大期以外は極域は高速風で占められているが、極大期に達すると北極に低速風が南極より速く出現し、約1年後に高速風の再出現している。この事実は、太陽極磁場の反転が南北で時間差があり、最近のサイクルでは北半球が先行する事実と一致している。また、サイクル23下降期からサイクル24極大までの期間で高速風の南北非対称性が大きくなっていることも本解析から明らかになった。この高速風の南北非対称性は、サイクル23極大直後の北半球優勢からサイクル24極大直前の南半球優勢に変化している。同様な傾向は、極域の太陽風速度を平均した場合にも見られる。この結果をWilcox Solar Observatoryの太陽磁場データと比較した。ここで注目したのは、太陽磁場データを多重極展開した時に得られる四重極成分g20である。四重極子は太陽磁場の南北非対称を生む原因として従来から指摘されていた。我々は、g20と双極成分g10の比をとり、IPS観測で見られた太陽風の南北非対称と比較した。その結果、g20/g10とIPSデータの南北非対称との間に弱いながら有意な相関が見られることがわかった。このことは、四重極子などの高次の磁場モーメントが太陽圏の南北非対称性を作るのに重要な役目をしていることを示している。