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[ACG32-06] ウィルツキ・ジェットによってモルジブ諸島東側に形成される波状構造
キーワード:赤道海洋, インド洋, モルジブ諸島, 波状構造, 力学
赤道太平洋では、赤道潜流が島嶼に衝突して下流側に波状構造が形成されることが知られており、観測と力学の研究が行われてきた。本研究ではインド洋の赤道ジェットであるウィルツキ・ジェットがモルジブ諸島にあたってできる波状構造を現場観測データによって検出し、数値モデルを用いて力学を調べた。現場観測データは、モルジブ諸島の東側(0, 80.5E及び0, 90E)に係留された音響式流速計から取得した。観測期間は80.5Eが約4年間、90Eが約10年間である。さらに、衛星海上風QuikSCATで駆動された海洋大循環モデルOFESの2000年から2009年までの出力も使用した。水平解像度0.1度、鉛直54層、OCCAMプロジェクトから得た現実的な地形を与えてある。加えて、1.5層モデルを用いた理想的な数値実験も行った。現場観測から得た赤道上の南北流を調べたところ、モンスーンの風によって強制された一年周期の変動に加え、半年周期の変動が存在することが分かった。OFESの赤道インド洋の南北流にも類似の半年周期変動が見られた。OFESの出力を用いて空間構造を調べたところ、東向きのウィルツキ・ジェットが現れる春季と秋季にモルジブ諸島の東側で南北流の波状構造が見られ、音響式流速計に見られた半年周期変動はその一部を捉えていたと考えられる。モルジブ諸島の大半は環礁であり海面に露出していないが、環礁の頂上は温度躍層(約100 m)より浅く、ウィルツキ・ジェットに対する障壁になり得ると考えられる。さらに、1.5層モデルを用いて理想的な実験を行った。モデル領域の中央にモルジブ諸島を模した島を置き、半年周期の東西風応力を与えてモデル内に東向きの赤道ジェットを生成した。その結果、東向きの赤道ジェットがモルジブを模した島に衝突すると下流側に波状構造が形成されるという現象が見られた。1.5層モデルとOFESの結果は、赤道上の南北流の東西波長がよく似ており、1.5層モデルに含まれる力学で構造が決まっていると考えられる。定常な東西流をモデル領域の端から流入させた実験でもよく似た波状構造が認められるため、赤道ジェットの時間変動は波状構造形成の本質的な要因ではない。1.5層モデルを用いた実験から、東向きの赤道ジェットが強くなると波状構造の東西波長が長くなることが分かった。