18:15 〜 19:30
[MIS33-P05] 東北沖における約100年間の地層記録と2011年の海底撹乱の記録
本研究では,東北地方太平洋沖地震直後に八戸沖,三陸沖,仙台沖から採取された海底表層堆積物について,詳細に記載した.これにより,2011年のイベントによる砂層が表層で観察された.さらに,堆積物の年代を入れることを主目的とし,放射性核種による詳細な解析を行った.
放射性核種による解析では,一般的に,210Pbex濃度の減少率から堆積速度を求めることができる.また,137Csの有無によって60年以内に堆積した堆積物か否かを判別することができる.これらの放射性核種から求められた年代論に基づいて,「短期間の堆積作用」として,2011年3月の地震によって生じたと考えられる海底での撹乱に伴う堆積作用を解析した.さらに,古地磁気学的な解析に基づいて,過去約100年間の定常的で穏やかな「長期間の地層記録」を明らかにした.
八戸沖の堆積物は,JAMSTECの「淡青丸」で2011年8月にマルチプルコアで採取された.仙台沖,三陸沖の堆積物は,JAMSTECの「なつしま」で2012年5月にMBARI式プッシュコアで採取された.これら2つの採泥方法では,海底表層をほぼ不撹乱で堆積物を採取することが可能である.
短期間の堆積作用と考えられるものに,以下のような構造や放射性核種プロファイルが確認された.
1)八戸沖の陸棚~陸棚外縁では,2011年3月の津波起源によると考えられる粗粒の砂質堆積物が分布していた.この層準の210Pb解析と生物擾乱等の堆積構造の特徴から,この砂質層は急激に堆積したことが示唆された.しかし,八戸沖陸棚斜面~海底扇状地ではそのような堆積物は確認できなかった.
2)仙台沖の陸棚斜面では,表層部に西→東,つまり陸側から海側への流れによって堆積した砂質堆積物が見られた.この砂質堆積物は, 210Pbと137Cs解析に基づくと,より下位層の細粒砂層とは不整合の関係にあり,2011年東北地方太平洋沖地震後に発生した津波によるイベント堆積物である可能性が極めて高いと結論付けられた.
3)三陸沖の海底谷では,210Pb解析により表層で短期間に堆積した可能性のある砂層が確認できた.
一方,長期間の地層記録は,以下のようにまとめられた.
1)八戸海底谷付近の陸棚斜面~海底扇状地では,イベント堆積物は確認されず,定常的な堆積が起きており,圧密も徐々に進行していることが明らかになった.この地域では堆積物粒子の初生構造が乱されていることが考えられ,古流向は判断できなかった.
2)仙台沖の陸棚斜面では,磁化特性に基づいて,北東→南西の卓越流が示された.この方向は100年以内の底層流の方向を示していると考えられる.
3)三陸沖の陸側斜面の海底谷底では,磁化特性に基づいて,南東→北西の卓越流が示された.また,210Pb解析に基づくと,その堆積速度は,深部で0.061~0.166 cm/yr(0.068~0.076 g/cm2/yr)であったが,表層では0.109 cm/yr (0.045 g/cm2/yr)であった.
以上のように,東北沖では,今まで議論されてきた仙台沖の深海イベント堆積物が三陸沖陸棚斜面にも確認されたが,八戸沖では陸棚までしか到達していないことが明らかとなった.
放射性核種による解析では,一般的に,210Pbex濃度の減少率から堆積速度を求めることができる.また,137Csの有無によって60年以内に堆積した堆積物か否かを判別することができる.これらの放射性核種から求められた年代論に基づいて,「短期間の堆積作用」として,2011年3月の地震によって生じたと考えられる海底での撹乱に伴う堆積作用を解析した.さらに,古地磁気学的な解析に基づいて,過去約100年間の定常的で穏やかな「長期間の地層記録」を明らかにした.
八戸沖の堆積物は,JAMSTECの「淡青丸」で2011年8月にマルチプルコアで採取された.仙台沖,三陸沖の堆積物は,JAMSTECの「なつしま」で2012年5月にMBARI式プッシュコアで採取された.これら2つの採泥方法では,海底表層をほぼ不撹乱で堆積物を採取することが可能である.
短期間の堆積作用と考えられるものに,以下のような構造や放射性核種プロファイルが確認された.
1)八戸沖の陸棚~陸棚外縁では,2011年3月の津波起源によると考えられる粗粒の砂質堆積物が分布していた.この層準の210Pb解析と生物擾乱等の堆積構造の特徴から,この砂質層は急激に堆積したことが示唆された.しかし,八戸沖陸棚斜面~海底扇状地ではそのような堆積物は確認できなかった.
2)仙台沖の陸棚斜面では,表層部に西→東,つまり陸側から海側への流れによって堆積した砂質堆積物が見られた.この砂質堆積物は, 210Pbと137Cs解析に基づくと,より下位層の細粒砂層とは不整合の関係にあり,2011年東北地方太平洋沖地震後に発生した津波によるイベント堆積物である可能性が極めて高いと結論付けられた.
3)三陸沖の海底谷では,210Pb解析により表層で短期間に堆積した可能性のある砂層が確認できた.
一方,長期間の地層記録は,以下のようにまとめられた.
1)八戸海底谷付近の陸棚斜面~海底扇状地では,イベント堆積物は確認されず,定常的な堆積が起きており,圧密も徐々に進行していることが明らかになった.この地域では堆積物粒子の初生構造が乱されていることが考えられ,古流向は判断できなかった.
2)仙台沖の陸棚斜面では,磁化特性に基づいて,北東→南西の卓越流が示された.この方向は100年以内の底層流の方向を示していると考えられる.
3)三陸沖の陸側斜面の海底谷底では,磁化特性に基づいて,南東→北西の卓越流が示された.また,210Pb解析に基づくと,その堆積速度は,深部で0.061~0.166 cm/yr(0.068~0.076 g/cm2/yr)であったが,表層では0.109 cm/yr (0.045 g/cm2/yr)であった.
以上のように,東北沖では,今まで議論されてきた仙台沖の深海イベント堆積物が三陸沖陸棚斜面にも確認されたが,八戸沖では陸棚までしか到達していないことが明らかとなった.