日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW24] 同位体水文学2015

2015年5月25日(月) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*安原 正也(独立行政法人 産業技術総合研究所)、風早 康平(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、大沢 信二(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設(別府))、高橋 正明(産業技術総合研究所)、鈴木 裕一(立正大学地球環境科学部)、風間 ふたば(山梨大学大学院医学工学総合研究部工学学域社会工学システム系)、浅井 和由(株式会社 地球科学研究所)

18:15 〜 19:30

[AHW24-P02] 福島県北部沿岸域の湧水,地下水の水質と安定同位体の特徴

*藪崎 志穂1 (1.福島大学 共生システム理工学類)

キーワード:南相馬市, 相馬市, 浪江町, 水質, 安定同位体, 涵養域

福島県北部沿岸域とその周辺地域(新地町,相馬市,南相馬市,浪江町,飯舘村)の地下水・湧水の水質と地下水流動,滞留時間を把握するために,2014年4月から調査を実施している。これまでの調査・分析の結果から,対象地域の湧水および地下水の水質の特徴は,ECは30 mS/m以下が多く,津波で浸水した地点の多くで海水の影響は消えていることが示された。pHは7以下が多いが,一部で7.5以上の高い値を示す地点があり,地質や滞留時間の影響が及んでいる可能性が考えられる。水温は13~18℃を示す地点が多いが,一部の湧水で12℃以下の低い値を示す地点があり,これらは標高の高い内陸部で涵養された可能性が示唆される。水質組成は多様であるが,浅層地下水ではCa-HCO3型を示している。井一方,深度20~30 mの地下水や地面から湧き出ている湧水ではNa-HCO3型を示す傾向が認められる。これらの地点の水温は相対的に低く,SiO2濃度は高い値を示していることから,相対的に滞留時間が長いと考えられる。また,一部地点ではCa-SO4型を示しており,これは地質の影響を受けていることが予想される。
湧水や地下水の酸素安定同位体比は約-10~-6‰,水素安定同位体比は約-65~-35‰と幅広く分布している。同位体比が相対的に高い値を示す地点は,土壌断面の浅い部分の湧水などであり,蒸発の影響を受けていると予想される。比較的標高の低い場所で涵養されたと予測される湧水(標高10m付近)の同位体比は,酸素安定同位体比で-7.7‰,水素安定同位体比で-49‰であり,これよりも低い同位体比を示すものは,より標高の高い地点で涵養された可能性が高いと考えられる。
対象地域の高度効果を求めたところ,酸素安定同位体比で-0.16‰/100 m,水素安定同位体比で-0.6‰/100 mであった。内陸部には標高600~700 mの阿武隈高地が広がっており,こうした地域で涵養された水の同位体比は計算上,酸素安定同位体比で1‰ほど,水素安定同位体比で4‰ほど低くなると考えられる。こうしたデータを活用することにより,沿岸域の湧水等の涵養標高について明らかにできると期待される。
今後は,現在分析を行っている3Hデータを解析し,相対的な滞留時間を把握してゆく。また,今後,CFCsやSF6分析用の採水を実施し,より詳細な滞留時間を把握して,地下水流動の解明に努めてゆく予定である。