09:00 〜 09:30
★ [AHW24-01] 付加体の深部地下水循環と微生物メタン生成・脱窒ポテンシャル
キーワード:付加体, 地下水, 地下圏微生物, メタン生成, 脱窒
静岡県中西部から中部、近畿、四国、九州、沖縄までの太平洋沿岸の地域は、厚い堆積層からなる。これらの堆積層は“付加体”と呼ばれている。付加体は、プレートテクトニクスによって海洋プレートが陸側プレートの下部に沈み込む際、海洋プレート上の海底堆積物が陸側プレートに付加し、その後、隆起してできた地層である。西南日本の付加体は主に白亜紀から第三紀にかけて堆積した太古の海底堆積物に由来しており、高濃度の有機物を含んでいる。また、付加体の深部地下圏には豊富な地下水が存在する。さらに、付加体の深部帯水層には大量の天然ガス(メタン)が含まれている。
我々は、静岡県中西部の付加体が分布する地域に構築された温泉用掘削井(深度1,000?1,500メートルの掘削井が多い)を調査し、深部地下水および付随ガスを採取した。そして、地下水の環境データ(水温、pH、EC、ORP)の測定、各種イオン濃度、付随ガスの組成、炭素安定同位体比を分析した。また、地下水に含まれる微生物群集を対象とした16S rRNA遺伝子解析および嫌気培養を試みた。そして、付加体の深部地下圏に生息する微生物によるメタン生成および脱窒ポテンシャルを明らかにした。
付加体の深部地下水の環境データより、付加体の深部地下水は嫌気性でること、主に沿岸域の掘削井から採取された地下水は比較的高い塩分を示すこと(2,000-3,100 mS/m)、中間部の掘削井から採取した地下水は中程度の塩分を示すこと(400-2,000 mS/m)、山間部の掘削井から採取した地下水は低い塩分を示すこと(<400 mS/m)が明らかとなった。付随ガスの組成分析より、沿岸部および中間部の掘削井から採取した付随ガスは96%以上の割合でメタンを含むことが示された。一方、山間部の掘削井から採取された付随ガスには50-80%のメタンとともに、20-50%の割合で窒素ガスも含まれていた。付随ガスに含まれるメタンと地下水に含まれる溶存態無機炭素(主に、重炭酸イオン)の炭素安定同位体比分析を行った結果、沿岸部の一部の付加体の深部地下圏に由来するメタンは有機物の熱分解起源であることが示された。一方、中間部と山間部の掘削井で採取されたメタンは、微生物起源であることが示された。
アーキアおよびバクテリアの16S rRNA遺伝子の解析より、付加体の深部帯水層中には水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌が優占することが明らかとなった。また、付随ガスに窒素ガスを多く含む山間部の深部地下水においては、脱窒細菌の16S rRNA遺伝子も検出された。深部地下水に有機基質を添加する嫌気培養を試みたところ、水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌の共生によるメタン生成が確認された。特に、中間部および山間部の掘削井にて採取した深部地下水を用いた嫌気培養において、高い水素ガス生成・メタン生成ポテンシャルが示された。さらに、窒素ガスを多く含む付随ガスが見られた山間部の深部地下水に有機基質と硝酸を添加した嫌気培養では、脱窒細菌による高速での窒素ガス生成も確認された。
地球化学と微生物学を融合させた一連の研究手法により、沿岸域の付加体深部地下圏では、有機物の熱分解によりメタンが生成されることが示された。一方において、中間部および山間部の付加体の地下圏では水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌の共生によって堆積層中の有機物が分解され、高速にメタンが生成されることが示された。さらに、山間部の付加体の地下圏では、水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌の共生によるメタン生成が起こると同時に、主に有機物を電子供与体とし、硝酸を電子受容体とした脱窒が起こっている可能性が示された。
我々は、静岡県中西部の付加体が分布する地域に構築された温泉用掘削井(深度1,000?1,500メートルの掘削井が多い)を調査し、深部地下水および付随ガスを採取した。そして、地下水の環境データ(水温、pH、EC、ORP)の測定、各種イオン濃度、付随ガスの組成、炭素安定同位体比を分析した。また、地下水に含まれる微生物群集を対象とした16S rRNA遺伝子解析および嫌気培養を試みた。そして、付加体の深部地下圏に生息する微生物によるメタン生成および脱窒ポテンシャルを明らかにした。
付加体の深部地下水の環境データより、付加体の深部地下水は嫌気性でること、主に沿岸域の掘削井から採取された地下水は比較的高い塩分を示すこと(2,000-3,100 mS/m)、中間部の掘削井から採取した地下水は中程度の塩分を示すこと(400-2,000 mS/m)、山間部の掘削井から採取した地下水は低い塩分を示すこと(<400 mS/m)が明らかとなった。付随ガスの組成分析より、沿岸部および中間部の掘削井から採取した付随ガスは96%以上の割合でメタンを含むことが示された。一方、山間部の掘削井から採取された付随ガスには50-80%のメタンとともに、20-50%の割合で窒素ガスも含まれていた。付随ガスに含まれるメタンと地下水に含まれる溶存態無機炭素(主に、重炭酸イオン)の炭素安定同位体比分析を行った結果、沿岸部の一部の付加体の深部地下圏に由来するメタンは有機物の熱分解起源であることが示された。一方、中間部と山間部の掘削井で採取されたメタンは、微生物起源であることが示された。
アーキアおよびバクテリアの16S rRNA遺伝子の解析より、付加体の深部帯水層中には水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌が優占することが明らかとなった。また、付随ガスに窒素ガスを多く含む山間部の深部地下水においては、脱窒細菌の16S rRNA遺伝子も検出された。深部地下水に有機基質を添加する嫌気培養を試みたところ、水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌の共生によるメタン生成が確認された。特に、中間部および山間部の掘削井にて採取した深部地下水を用いた嫌気培養において、高い水素ガス生成・メタン生成ポテンシャルが示された。さらに、窒素ガスを多く含む付随ガスが見られた山間部の深部地下水に有機基質と硝酸を添加した嫌気培養では、脱窒細菌による高速での窒素ガス生成も確認された。
地球化学と微生物学を融合させた一連の研究手法により、沿岸域の付加体深部地下圏では、有機物の熱分解によりメタンが生成されることが示された。一方において、中間部および山間部の付加体の地下圏では水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌の共生によって堆積層中の有機物が分解され、高速にメタンが生成されることが示された。さらに、山間部の付加体の地下圏では、水素発生型発酵細菌と水素資化性メタン生成菌の共生によるメタン生成が起こると同時に、主に有機物を電子供与体とし、硝酸を電子受容体とした脱窒が起こっている可能性が示された。