日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC11] Volatiles and volcanoes: the role of volatiles in determining how and when volcanoes erupt

2015年5月24日(日) 09:00 〜 10:45 A04 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*Iona McIntosh(Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)、Atsushi Toramaru(Department of Earth and Planetary Sciences, Faculty of Sciences, Kyushu University)、Alexander Nichols(Japan Agency for Marine Earth Science and Technology)、座長:寅丸 敦志(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、Alexander Nichols(Japan Agency for Marine Earth Science and Technology)

09:00 〜 09:15

[SVC11-01] 地殻・上部マントル圧力での含水メルトの密度・圧縮率モデル

*上木 賢太1 (1.独立行政法人海洋研究開発機構)

キーワード:マグマ, 密度, 含水

上昇、噴火、結晶分化やマグマ混合などのマグマプロセスにおいて、メルトの密度は非常に重要な要素である。これまで、地殻からマントルウェッジの圧力(〜5GPa)での含水メルトの密度や圧縮率はきちんとは制約されてこなかったが、近年、X線を用いたメルト密度のその場測定の手法が確立され (e.g., Sakamaki et al., 2009)、高温高圧での含水メルトの密度の実験値が充実しつつある。統一的にこれらの実験結果を説明するとともに熱力学的にも整合性があるメルトの物理パラメーターのデータセットを構築することは、火山モデリングだけではなく地球物理データの解釈や熱力学モデル作成の過程においても非常に重要である。
 本研究は、0-5GPaの圧力、コマチアイト、フォノライトやライオライトまでの幅広いメルト組成に適用可能な含水メルトの密度モデルの構築を行った。状態方程式としては、バーチマーナガン方程式を用いた。無水のメルトのモル体積とバルクモジュラスは、高圧実験との整合性を確認した上で、Lange and Carmichael (1990)の実験値を用いて計算した。ドライメルトのK’(バルクモジュラスの圧力微分)は、メルトのSiO2含有量に線形と仮定してパラメーター化を行った。これらの方程式とパラメーターの組み合わせは、これまで報告されている無水メルトの実験結果を適切に再現することを確認した。メルト中の水成分の圧縮率、熱膨張率および、部分モル体積とK’に関して、先行研究で報告された常圧および地殻から上部マントル実験値を参照して、コンパイルおよびキャリブレーションを行った。
 構築したパラメーターセットを用いて様々なメルト組成や含水量に於いて密のどの計算を行った結果、過去の論文が提示していたパラメーターを使用するよりも高精度で、幅広いバルクや含水量でのメルトの密度を再現することに成功した。本研究で作成した密度モデルは、沈み込み帯メルトの圧力、化学組成、含水量の幅をカバーしており、噴火や分化モデル計算の際の固相とメルトの密度差の計算のほか、地震波速度からのインバージョンによるマントルや地殻のメルト分率やメルト組成の推定、そして、含水メルトを含む系の熱力学モデル作成に向けて有用である。含水メルトの体積や圧縮率は、ドライメルトと水成分の線形重ね合わせで表現できた。この結果は、メルト中の水成分の体積や圧縮率には、含水量やメルト組成への依存性が存在していないことを表している。このことは、含水系の溶融の熱力学モデル作成に向けて大きな制約となる。