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[SVC12-05] 2014年2月のインドネシア・ケルト火山噴火に伴う近傍場での電離圏全電子数擾乱のGNSSによる観測
キーワード:GNSS, GPS, 火山, 電離圏, 超低周波音, 大気共振
2014年2月13日、インドネシア・ジャワ島のKelud火山が噴火した。この噴火はVolcanic Explosivity Index で4を記録する、比較的大規模なプリニー式噴火であった。本論文では、全地球衛星測位システム(Global Navigation Satellite System; GNSS) を用いて電離圏全電子数 (Total Electron Content; TEC) を求める手法 (GNSS-TEC法) によって検出された、上空約250 kmの電離圏で発生した波動について解析した。そして、得られた結果を広帯域地震計のデータおよび先行研究の結果と比較することで、励起メカニズムに迫った。
GNSS-TEC解析には、インドネシアのジャワ島およびスマトラ島をはじめとする火山近傍の島嶼にBadan Informasi Geospatial (BIG)、International GNSS Service (IGS) そしてSumatra GPS Array (SuGAr) によって設置された37のGNSS定常観測点から得られたThe Receiver Independent Exchange Format (RINEX) 観測データを用いた。
RINEX観測データから算出した斜めTECからは、16:25 UT頃から19:00 UT前後まで続く擾乱が検出された。擾乱は1 km/s で同心円上外向きに伝搬した。スペクトル解析の結果、3.7 mHzと4.6 mHzそして6.7 mHzにピークが見られた。3.7 mHzと4.6 mHzの振動は基準振動モード理論から計算される大気の固有周波数とほとんど一致する。6.7 mHzも高調波成分ではないかと考えられるが、高調波成分は特に大気の構造に依存するため、定かではない。
地震観測網、GEOFONの24の広帯域地震計 (STS-1) から得られた地震波形の周期10 -100 秒の成分からは、15:50 UTに強い音波の信号が、そして16:15 UTに発生したレイリー波の信号とそれに続く1時間45分ほど続く音波が観測された。レイリー波は固体部分のなんらかの破壊、そして音波は雑音として検出される大気振動由来の信号であると解釈される。
さらにKelud火山から約200 km離れたGEOFON観測点、UGMで得られた波形を周波数(周期) 成分ごとに見た。その結果、周期15-30 秒及び100-200 秒の成分が18:00 UT頃に収束するのに対して、周期200-300 秒の成分は19:00 UT頃まで振動を続けることがわかった。この周期200-300 秒の波動は、下層大気の自由振動と解釈できる。
そして、世界に展開された78の広帯域地震計(STS-2)からなる観測網、GSNから得られた地震波形の周期100-1000 秒の成分を確認した。スローネス解析から、Kelud火山からレイリー波速度で伝搬する波動が存在することがわかった。そしてそれらの波動から得られた震源時間関数をスペクトル解析した。その結果、GNSS-TECとほぼ同様の3.7 mHz、4.8 mHzおよび6.7 mHzを含むいくつかのピークを確認することができた。
以上の地震波形やその他気象衛星による観測などとの比較から、今回、GNSS-TEC法によって、火山の連続的噴火によって励起される大気の自由振動、噴火終了後の1時間程度続く自由振動のゆるやかな減衰を観測したと考えた。Kelud火山付近から伝搬するレイリー波は検出されたが、大気の自由振動が固体地球の振動を励起したものと推測している。
本論文で得られた解析結果は、火山噴火によって発生した大気共振の空間構造の時間発展を電離圏において初めて観測したものである。今後は、Kelud火山近傍の大気構造を考慮した基準振動モード解析から、Kelud火山周辺での固有振動数の理論値を算出し、比較を進める必要がある。そして、インフラサウンドや大気光カメラのデータをはじめとする各種観測データとの比較を進め、より詳細なメカニズムの解明も進めなければならない。
GNSS-TEC解析には、インドネシアのジャワ島およびスマトラ島をはじめとする火山近傍の島嶼にBadan Informasi Geospatial (BIG)、International GNSS Service (IGS) そしてSumatra GPS Array (SuGAr) によって設置された37のGNSS定常観測点から得られたThe Receiver Independent Exchange Format (RINEX) 観測データを用いた。
RINEX観測データから算出した斜めTECからは、16:25 UT頃から19:00 UT前後まで続く擾乱が検出された。擾乱は1 km/s で同心円上外向きに伝搬した。スペクトル解析の結果、3.7 mHzと4.6 mHzそして6.7 mHzにピークが見られた。3.7 mHzと4.6 mHzの振動は基準振動モード理論から計算される大気の固有周波数とほとんど一致する。6.7 mHzも高調波成分ではないかと考えられるが、高調波成分は特に大気の構造に依存するため、定かではない。
地震観測網、GEOFONの24の広帯域地震計 (STS-1) から得られた地震波形の周期10 -100 秒の成分からは、15:50 UTに強い音波の信号が、そして16:15 UTに発生したレイリー波の信号とそれに続く1時間45分ほど続く音波が観測された。レイリー波は固体部分のなんらかの破壊、そして音波は雑音として検出される大気振動由来の信号であると解釈される。
さらにKelud火山から約200 km離れたGEOFON観測点、UGMで得られた波形を周波数(周期) 成分ごとに見た。その結果、周期15-30 秒及び100-200 秒の成分が18:00 UT頃に収束するのに対して、周期200-300 秒の成分は19:00 UT頃まで振動を続けることがわかった。この周期200-300 秒の波動は、下層大気の自由振動と解釈できる。
そして、世界に展開された78の広帯域地震計(STS-2)からなる観測網、GSNから得られた地震波形の周期100-1000 秒の成分を確認した。スローネス解析から、Kelud火山からレイリー波速度で伝搬する波動が存在することがわかった。そしてそれらの波動から得られた震源時間関数をスペクトル解析した。その結果、GNSS-TECとほぼ同様の3.7 mHz、4.8 mHzおよび6.7 mHzを含むいくつかのピークを確認することができた。
以上の地震波形やその他気象衛星による観測などとの比較から、今回、GNSS-TEC法によって、火山の連続的噴火によって励起される大気の自由振動、噴火終了後の1時間程度続く自由振動のゆるやかな減衰を観測したと考えた。Kelud火山付近から伝搬するレイリー波は検出されたが、大気の自由振動が固体地球の振動を励起したものと推測している。
本論文で得られた解析結果は、火山噴火によって発生した大気共振の空間構造の時間発展を電離圏において初めて観測したものである。今後は、Kelud火山近傍の大気構造を考慮した基準振動モード解析から、Kelud火山周辺での固有振動数の理論値を算出し、比較を進める必要がある。そして、インフラサウンドや大気光カメラのデータをはじめとする各種観測データとの比較を進め、より詳細なメカニズムの解明も進めなければならない。