日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GG 地理学

[H-GG01] International comparison of landscape appreciation

2015年5月28日(木) 14:15 〜 16:00 101B (1F)

コンビーナ:*Christoph Rupprecht(Griffith School of Environment, Griffith University)、高瀬 唯(千葉大学大学院園芸学研究科)、古谷 勝則(千葉大学大学院園芸学研究科)、座長:Christoph Rupprecht(Griffith School of Environment, Griffith University)

15:45 〜 16:00

[HGG01-16] サーベイ論文から見た景観評価研究の最近の動向

*青木 陽二1Christoph Rupprecht2高山 範理3 (1.放送大学、2.グリフィス大学、3.森林総合研究所)

キーワード:サーベイ論文, 景観評価研究, 最近の動向

サーベイ論文から見た景観評価研究の最近の動向
青木陽二・ルプレヒト・クリストフ・高山範理
1967年に始まった計量心理学的景観評価研究は1970-1990年代に隆盛を迎え、最近は研究が減少傾向にある。そのことは図1に示すように、発表論文数とサーベイ論文が少なくなったことからも分かる。この間に多くの研究上の発達が見られた。1969年に、Shaferにより、最初の景観評価を説明する研究が発表され、多くの類似の研究が発表された。一方でCarlson(1977)はこのような景観評価予測モデルの有効性に疑問を投げかけた。しかし、この批判は具体的な解決法を示さなかった。そして、図のような減衰傾向となり、景観評価研究が世界的に大きな壁に突き当たったことを示した。
日本と米国が景観評価研究をリードしていた1970年代には、日本では景観評価の計量化や結果の適用が進み、計画案の提案にまで進んでいた。一方、米国では、民族や文化の多様性を背景に、人種や属性による評価結果の違いに関して研究が進んだ。日本では比較的単純な民族、文化的背景で、景観評価の結果はどこでも誰でも同じになるという考えで、評価結果の現場での適用が提案されていた。しかし、米国では多様なステークホルダーが社会には存在し、安易な計画案適用は進まなかった。そして、むしろ景観評価の多様性を研究する方向へ進んでいった。
景観評価研究が日本や米国から欧州や世界へと広がるに従って、米国で進んでいた民族や文化的背景による、評価結果の違いが大きな問題となってきた。そして、景観評価とは何を調べているのかという問題に突き当たった。すなわち、景観評価という現象は、人類のみに与えられた、大部分は後天的に作られた人間の精神的側面の一部であることが理解されるようになった。
これにより景観評価の時代的変遷や地域における普遍性について考える研究が生まれて来た。物的計画により景観を形作って来た計画者は、現在得られた景観評価結果がいつまで続くのか何処で適用可能なのか不安を持つようになった。ここで、景観評価研究は大きな壁にぶつかったのである。
しかし、景観評価研究は最近では、発展途上国で盛んに研究されるようになり、論文数が2011年より再び増加してきた。これらの途上国の研究から現在の景観評価研究の壁を突破する研究が生まれる可能性が出て来た。JpGU2013、2014での議論を踏まえ、JpGU2015 の研究集会の成果がこれらの研究を支えることを希望する。