日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS30] 地震発生の物理・震源過程

2015年5月25日(月) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*安藤 亮輔(東京大学大学院理学系研究科)、加瀬 祐子(産業技術総合研究所 活断層・地震研究センター)

18:15 〜 19:30

[SSS30-P02] 遠地実体波を用いた巨大地震の震源過程速報解析に向けて: 波線理論によるグリーン関数の問題点とその影響の考察

*吉本 昌弘1山中 佳子1 (1.名古屋大学環境学研究科)

キーワード:遠地実体波, グリーン関数, 波線理論, W phase, 巨大地震

巨大地震の震源過程は,遠地実体波を用いることで,どの場所で発生した巨大地震でも今やほぼリアルタイムに解析をすることができるようになった.遠地実体波解析の多くは波線理論的な方法によってグリーン関数の計算を行っているが,そのような方法では以下に挙げる2つの問題が生じてしまう:1つはPP波などの後続波を全て計算することが難しいこと(近似的な計算は可能),もう1つは短波長近似なので超長周期のW phaseの計算が不可能なことである.この問題を解決するため,我々はDirect Solution Methodで計算されたフルウェーブのグリーン関数を導入した.既に2004年スマトラ島沖地震(Yoshimoto and Yamanaka, EPS, 2014)や2010年チリ地震(吉本・山中,地震学会2013)の解析を行ってきた.
波線理論で計算されたグリーン関数の問題点をより明瞭にするために,2011年東北地方太平洋沖地震の前震(Mw7.3)と2007年ソロモン諸島の地震(Mw8.1)についてもフルウェーブのグリーン関数を用いて遠地実体波解析を行い,同様の解析条件で波線理論によるグリーン関数を用いて解析をした結果との比較を行った.その結果,2011東北沖の前震(Mw7.3)では結果にほぼ差は見られなかったが,2007年ソロモン地震(Mw8.1)では波線理論による結果ではフルウェーブのグリーン関数を用いた結果に比べて震源過程後半部でモーメント解放が小さくなってしまう結果が得られた.同様の結果は2010年チリ地震(Mw8.8)でも得られている.この違いは,主には波線理論によるグリーン関数がW phaseを計算できないためであると考えられる.この結果は,たとえM8クラスの巨大地震であっても,W phaseが観測波形に顕著に観測されていればもはや波線理論で計算されたグリーン関数を使用することは妥当ではない可能性を示している.
フルウェーブグリーン関数は計算コストがかかるため,現在ではまだ震源過程速報解析に使用することは難しいかもしれない.震源過程速報解析などで波線理論によるグリーン関数を使用する場合も,可能な限りW phaseのP波付近に対する相対振幅が小さいような観測点を使用し解析をするべきである.そのような観測点を使用することが難しい場合は,長周期成分の影響の少ない速度波形での波形インバージョンを検討すべきであろう.