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★ [SCG59-09] 珪長質マグマの粘性流動と摩擦すべり:火山の噴火様式の多様性に対する意義
キーワード:珪長質マグマ, 粘性流動, 摩擦すべり, X線ラジオグラフィー
火道内を上昇する珪長質マグマ中では変形が集中し,その領域では脆性破壊が起こる(e.g., Dingwell, 1996 Science).このような変形集中が火道壁付近で起こり破砕帯が形成されると,弱い破砕帯を利用して急激なマグマの上昇が可能となる(Okumura et al., 2013 EPSL).さらに,変形は脱ガス効率を大きく上昇させるので,逆に変形集中帯の形成が,内部の変形・脱ガスを抑制し爆発性を維持させる.一方で,そのような潤滑作用が抑えられマグマが均質に流動すると,変形による脱ガス効率の促進によって内部のマグマが緻密化し溶岩が形成される.このような緻密なマグマの形成は,溶岩噴出へとつながるだけでなく,後から上昇してくるマグマに対する蓋となり過剰圧を発生させ小規模な爆発噴火を引き起こすかもしれない.このようにマグマ破砕帯の流動特性を理解することは噴火様式の多様性の原因を解明するために不可欠であるが,破砕帯が粘性流動するか摩擦すべりするかを決定づけている要因は明らかにされていない.本研究では,高温高圧変形実験装置を放射光X線ビームライン(BL20B2)と組み合わせることでマグマの変形を直接観察しマグマ破砕帯の流動様式を明らかにすることを目的とした.ここでは二つのタイプの実験を行った.一つ目は,変形集中と破砕帯の形成を観察するための実験で,出発物質にはコア状の流紋岩組成ガラスを用いた.二つ目の実験では,破砕帯の流動様式,つまり粘性流動するか,摩擦すべりするかを直接観察するためにガラス粉体(75-250 um)を用いた変形実験を行った.変形実験はピストン回転型試験機を用いて,温度が800-900℃,軸圧が<20MPaの条件で行った.ピストンの回転速度は,0.1~10rpmで,すべり速度に直すと2×10-5~2×10-3 m s-1となる.粘性流動した場合の歪速度は最大で1 s-1となる.また実験温度は用いた出発物質のガラス転移点(~600℃)よりも高温である。一つ目の実験より,初め試料全体にクラックが入り,その後ピストン付近へ変形が集中すること,変形集中帯では破砕が進行し破砕帯が形成されるなどが分かった.また,速度一定下では,一旦破砕帯が形成されるとヒーリングせず,摩擦すべりに支配されることが示された.二つ目の実験より,ガウジの流動様式は温度,変形速度,軸圧に依存し,高温,低速度,高軸圧ほど粘性流動が支配的になることが分かった.例えば,摩擦すべり条件下で変形速度だけを低下させていくと粘性流動へと変化した.本研究で明らかになった粘性流動と摩擦すべりの変化条件を火道上昇するマグマに適用すると,火道浅部での破壊帯形成と摩擦すべりはマグマ上昇の潤滑剤となりえることが分かる.一方で,上昇中に破砕帯がヒーリングすると,マグマ上昇にブレーキがかかるため溶岩噴出や,破砕とブレーキが繰り返せば周期的なマグマの上昇を引き起こすかもしれない.