日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(ポスター発表)

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM02] Geomorphology

2015年5月26日(火) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)、小口 千明(埼玉大学大学院理工学研究科)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)

18:15 〜 19:30

[HGM02-P05] 流れ山の規模―頻度分布特性の地形学的意義

*吉田 英嗣1 (1.明治大学文学部)

流れ山とは,火山体などで起こる巨大山体崩壊によって発生する岩屑なだれの堆積面上に形成される小丘状の地形のことをいう.本研究では,この流れ山の規模―頻度分布特性とその地形学的意義を検討した.
本研究で対象としたのは日本の16事例とフィリピンの1事例の計17事例であり,流れ山の規模(A:面積により代替)と頻度(N(x):累積個数)との関係は指数分布,
      log10N(x)=a-bx(1)
によってあらわされることが明らかとなった(吉田,2015).なお、abは定数である.
b値は事例ごとに異なっており,ほぼ1―2の範囲に含まれる.流れ山は,基本的には山体を構成していた一部が「岩屑なだれブロック」として芯部をなすことによって形成される起伏とみなしうる.そして一般には,流れ山は岩屑なだれの流走にともなってサイズを減じていくことが知られている(Yoshida et al., 2012).したがって,流れ山の規模―頻度分布特性を示す回帰線の傾き(式(1)のb値)は,岩屑なだれの流走にともなう流れ山(またはその芯部となりうる岩屑なだれブロック)の縮小(または破壊)の過程を反映した特性値ということになる.その値の大小が意味することは,「規模の縮小にともなう頻度の増大」の程度が異なる,ということである.b値が大きいときには規模の縮小にともなう個数の増え方が急(大)であり、値が小さいと逆に、規模の縮小にともなう個数の増え方が緩やかとなる.
上記の「規模の縮小にともなう頻度の増大」の程度は,事例間の物性に大きな相違がないと仮定すれば,岩屑なだれの運動特性に大きく依存していると推測される.それは,岩屑なだれが流動的であるほど,破砕が効果的に進み,規模が縮小していくばかりでなく頻度の増加率も大きくなると考えられるからである.そこで岩屑なだれの流動性を端的に示す等価摩擦係数(H/L)とb値との関係を検討してみたところ,両者間で強い相関がみられることが判明した.つまり,流動性が小さい(H/Lが大)岩屑なだれでは流れ山の規模―頻度分布においてb値は小さい傾向にあり、流動性が大きくなると(H/Lが小)b値は増加することが示され,上記の考えが指示される結果となった.

(文献)吉田(2015)日本地理学会2015年度春季学術大会;Yoshida et al. (2012) Geomorphology, 136, 76-87.