日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS25] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、八木 浩司(山形大学地域教育文化学部)、内田 太郎(国土技術政策総合研究所)

18:15 〜 19:30

[HDS25-P14] 花崗岩およびホルンフェルスを基盤とする斜面における表層崩壊と土層構造の特徴

*渡壁 卓磨1松四 雄騎2千木良 雅弘2鄒 青穎2平田 康人1 (1.京都大学理学研究科、2.京都大学防災研究所)

キーワード:表層崩壊, 花崗岩, ホルンフェルス, 土層構造

2014年8月22日未明,3時間雨量150 mmを超える豪雨が引き金となり,広島市安佐の丘陵斜面において表層崩壊が群発した.研究対象地域の地質は,ジュラ紀の付加体堆積岩類および,白亜紀の花崗岩類,さらにそれらに貫入する貫入岩類の3種類に大別できる.堆積岩類は花崗岩類との接触により熱変成し,ホルンフェルス化している.貫入岩類は,鉛直に近い傾斜を持ち,北東-南西および北西-南東方向に走向を持つものが多い.表層崩壊の発生密度は花崗岩地域で高い傾向がある.崩壊地の形状については,斜面の傾斜に30-45°と大きな差異はないが,崩壊深度は花崗岩で0.5-1 mの深さであるのに対し,ホルンフェルスのほうは1-3 mであり,地質による違いがみられた.崩壊の発生密度や崩壊の形状の差異は,崩壊物質となる風化生成物や豪雨時における斜面中の降雨浸透プロセスの違いを反映している可能性がある.花崗岩類およびとホルンフェルス地域における典型的な表層崩壊地において,斜面調査用簡易貫入試験器によるサウンディング,滑落崖の整形によるピット掘削の調査調査を行った.ピットの壁面においてすべり面を認定し,不撹乱状態の土層試料を深度別に採取した.花崗岩の崩壊地では,貫入抵抗が漸増し,尾根部で8 mの風化帯が発達しており,風化帯の厚みは崩壊地に向けて薄くなっていった.崩壊地の頭部は風化帯が薄くなる傾斜変換点付近に位置していた.また,すべり面は風化残積土と運積土の境界付近にあった.土層の透水係数は10-5-10-2 cm/sとなり,透水性は深度が大きくなるほど小さくなる傾向がみられた.これらの結果は,基盤岩と土層との境界部で崩壊が生じたのではなく,土層内の強度の不連続面で崩壊が生じていることを示唆している.ホルンフェルスの崩壊地では,土層浅部ではNc値が10以下であり基盤岩石に到達すると同時に急激に増大する傾向があった.透水係数は10-8-10-4 cm/sの範囲であり,すべり面の以深では直下で急激に透水性が低くなる.この深度での水理的な不連続性が表層崩壊の発生を引き起こした可能性がある.今後は,異なる厚みと物性をもつ土層がどのように生成されるのかを明らかにするために,土層中の粘土鉱物の量や土粒子の粒径分布,間隙率の分布およびせん断強度を定量化する予定である.