日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS03] Exploring the role of soil in earth science: ecological/biogeochemical linkage and beyond

2015年5月27日(水) 09:00 〜 10:45 104 (1F)

コンビーナ:*和穎 朗太(農業環境技術研究所 物質循環研究領域)、小崎 隆(首都大学東京)、座長:和穎 朗太(農業環境技術研究所 物質循環研究領域)

10:30 〜 10:45

[MIS03-03] 熱帯山地林における低リン土壌への適応としての樹木根の形態と生理特性の関係

*潮 雅之1藤木 泰斗2日高 周3北山 兼弘4 (1.龍谷大学理工学部、2.三菱UFJリサーチ&コンサルティング、3.北海道大学、4.京大農学研究科)

キーワード:リン酸分解酵素活性, 植物-土壌相互作用, 樹木根, 根表面積, 土壌リン可給性, 熱帯山地林

ボルネオ熱帯林はリン欠乏土壌の上に成立しているにも関わらず、高いレベルの生産性やバイオマスを維持している。樹木根のリン獲得機構は森林の生産性/バイオマス維持に重要な貢献を果たしている可能性がある。しかしながら、樹木地上部の特性(例えば葉の栄養塩濃度や光合成特性)に比べると樹木根の土壌リン欠乏に対する適応は分かっていないことが多い。本研究では、樹木根の土壌リン可給性への応答を明らかにするため、土壌リン可給性に大きな違いがある3つのボルネオ熱帯山地林で根の形態的・生理的特性の変化を測定した。具体的には、3つの森林で合計37優占樹種・149個体の樹木実生を採取し、根のリン酸分解酵素活性(有機態リンから無機態リンを獲得する活性の指標)と根の表面積、直径、組織密度を測定した。

その結果、樹木群集スケールでは土壌リン可給性が減少するにともない、根のリン酸分解酵素活性と根の単位重量あたりの表面積が上昇し、根の直径は減少した。この関係は複数の森林サイトに分布する単一の樹木種に着目しても定性的には同じだった。根のリン酸分解酵素活性は根の表面積と有意な正の相関を示し、根の直径と有意な負の相関を示した。これは細い根が高いリン酸分解酵素活性を保持していることを示唆している。さらに我々は種レベルで根のリン酸分解酵素活性と葉のリン濃度と比較し、有意な負の相関を見出した。これは根のリン獲得機構が葉のリン濃度に影響している、あるいは葉のリン濃度が根のリン獲得機構に影響を与えていることを示唆している。

結論として、根の生理的・形態的特性は土壌リンの可給性にともなって変化した。さらに、樹木根の特性は葉のリン濃度と同調して変化していた。土壌リン可給性の変化に伴う樹木の地上部・地下部特性の同調的かつ適応的な変化がボルネオ熱帯山地林での生産性やバイオマスの維持に貢献しているのかもしれない。