09:00 〜 09:25
★ [SCG65-01] 活断層調査20年間の概観と今後の課題
キーワード:活断層, 内陸地震
1.20年間の調査概観
兵庫県南部地震後,国の地震調査研究推進本部が中心になって,10年計画で全国約100の主要活断層の調査が実施された.その後の10年間にも,大規模な地震の発生が切迫している可能性がある活断層(糸魚川‐静岡構造線断層帯など)や地震が発生した際の社会的影響が大きい活断層(上町断層帯など)の重点的調査が実施されている.また,調査が不十分な活断層の追加・補完調査や,2005年福岡県西方沖の地震,2007年新潟県中越沖地震などの発生をうけて,沿岸海域に分布する活断層の調査も行われている.講演では,幾つかの主要な活断層を取り上げ,解明されたこと,未解明の問題を紹介する.
2.今後の課題
20年間の調査と大震災後に地震を引き起こした活断層・震源域の調査を踏まえて,今後の課題として,次の3点を指摘したい.
(1)断層活動の多様性の解明
六甲・淡路島断層帯,濃尾断層帯,三方・花折断層帯などの調査結果で示されるように,断層帯では単独・連動・連鎖など様々なパターンの断層活動が起きる.このような多様な地震が発生するメカニズムを解明し,連動・連鎖の範囲を予測するため,古地震事例を収集すると共に,断層帯の応力状態の解明など,地震,地殻変動等の観測研究を含め,基礎的な研究を進展させる必要がある.また,2004年新潟県中越地震や2008年岩手・宮城内陸地震の地震断層調査により,同一断層上の同一地点でもズレの量は活動毎に大きく異なる場合があることが分かった.この事実は活動履歴情報に基づく予測では,地震の頻度を過少評価している可能性があることを示唆する.従って,このような現象の発現メカニズムの研究も不可欠である.
(2)断層浅部(狭義の活断層)と断層深部(震源断層)の関係の解明
(1)の課題の解明には,断層の浅部と深部がどのように繋がっているのか明らかにすることも不可欠である.2007年中越沖地震では,柏崎刈羽発電所ほぼ直下の震源断層活動域と同断層の地表表出と推定される海底活断層の位置的乖離の大きさは,この課題の重要性を如実に示した.しかし,現在の反射法地震探査などの地球物理学的手法や断層関連褶曲法などの地形・地質学的手法は,この課題に応えるだけの十分な解像度と拘束力を持っていない.それ故,中央構造線断層帯,糸魚川‐静岡構造線断層帯,関東平野北西縁断層帯などのように,断層の3次元形状について論争中の断層も多い.関連分野の総力を挙げて,この課題に取り組み,断層帯とその周辺の3次元地下構造の解明に挑戦する必要がある.
(3)地表痕跡(変動地形など)が不明瞭な活断層の調査と評価
2000年鳥取県西部地震は活断層が知られていないところで発生した.地震後,震源域周辺の調査を行った結果,震源域の西約5kmと東約9kmに変動地形を伴う活断層が見出された.変動地形が明瞭でないのに地震を起こした断層と変動地形がより明瞭なのに活動しなかった断層のペアは,1927年北丹後地震地域や2005年福岡県西方沖の地震地域でも認められる.また,新潟県中越地震,岩手・宮城内陸地震,福岡県西方沖の地震は既知の活断層の走向方向への延長で起きた.新潟県中越地震と岩手・宮城内陸地震は,正断層として形成された断層が逆断層として再活動して引き起こされたと推定される.以上から,既知活断層の両側・走向延長,現在の応力場で活動しやすい姿勢の地質断層を手始めに,この種の断層の調査に取り組み,地震発生ポテンシャルの過小評価の改善に貢献すべきと考える.
兵庫県南部地震後,国の地震調査研究推進本部が中心になって,10年計画で全国約100の主要活断層の調査が実施された.その後の10年間にも,大規模な地震の発生が切迫している可能性がある活断層(糸魚川‐静岡構造線断層帯など)や地震が発生した際の社会的影響が大きい活断層(上町断層帯など)の重点的調査が実施されている.また,調査が不十分な活断層の追加・補完調査や,2005年福岡県西方沖の地震,2007年新潟県中越沖地震などの発生をうけて,沿岸海域に分布する活断層の調査も行われている.講演では,幾つかの主要な活断層を取り上げ,解明されたこと,未解明の問題を紹介する.
2.今後の課題
20年間の調査と大震災後に地震を引き起こした活断層・震源域の調査を踏まえて,今後の課題として,次の3点を指摘したい.
(1)断層活動の多様性の解明
六甲・淡路島断層帯,濃尾断層帯,三方・花折断層帯などの調査結果で示されるように,断層帯では単独・連動・連鎖など様々なパターンの断層活動が起きる.このような多様な地震が発生するメカニズムを解明し,連動・連鎖の範囲を予測するため,古地震事例を収集すると共に,断層帯の応力状態の解明など,地震,地殻変動等の観測研究を含め,基礎的な研究を進展させる必要がある.また,2004年新潟県中越地震や2008年岩手・宮城内陸地震の地震断層調査により,同一断層上の同一地点でもズレの量は活動毎に大きく異なる場合があることが分かった.この事実は活動履歴情報に基づく予測では,地震の頻度を過少評価している可能性があることを示唆する.従って,このような現象の発現メカニズムの研究も不可欠である.
(2)断層浅部(狭義の活断層)と断層深部(震源断層)の関係の解明
(1)の課題の解明には,断層の浅部と深部がどのように繋がっているのか明らかにすることも不可欠である.2007年中越沖地震では,柏崎刈羽発電所ほぼ直下の震源断層活動域と同断層の地表表出と推定される海底活断層の位置的乖離の大きさは,この課題の重要性を如実に示した.しかし,現在の反射法地震探査などの地球物理学的手法や断層関連褶曲法などの地形・地質学的手法は,この課題に応えるだけの十分な解像度と拘束力を持っていない.それ故,中央構造線断層帯,糸魚川‐静岡構造線断層帯,関東平野北西縁断層帯などのように,断層の3次元形状について論争中の断層も多い.関連分野の総力を挙げて,この課題に取り組み,断層帯とその周辺の3次元地下構造の解明に挑戦する必要がある.
(3)地表痕跡(変動地形など)が不明瞭な活断層の調査と評価
2000年鳥取県西部地震は活断層が知られていないところで発生した.地震後,震源域周辺の調査を行った結果,震源域の西約5kmと東約9kmに変動地形を伴う活断層が見出された.変動地形が明瞭でないのに地震を起こした断層と変動地形がより明瞭なのに活動しなかった断層のペアは,1927年北丹後地震地域や2005年福岡県西方沖の地震地域でも認められる.また,新潟県中越地震,岩手・宮城内陸地震,福岡県西方沖の地震は既知の活断層の走向方向への延長で起きた.新潟県中越地震と岩手・宮城内陸地震は,正断層として形成された断層が逆断層として再活動して引き起こされたと推定される.以上から,既知活断層の両側・走向延長,現在の応力場で活動しやすい姿勢の地質断層を手始めに,この種の断層の調査に取り組み,地震発生ポテンシャルの過小評価の改善に貢献すべきと考える.