日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT52] 空中からの地球計測とモニタリング

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*楠本 成寿(富山大学大学院理工学研究部(理学))、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、小山 崇夫(東京大学地震研究所)

18:15 〜 19:30

[STT52-P01] 北海道石狩低地の磁気構造

*大熊 茂雄1中塚 正1 (1.産業技術総合研究所地質調査総合センター)

キーワード:空中磁気探査, 磁気異常, 北上-石狩磁気ベルト, 石狩低地, 苫小牧, 3次元イメージング

産業技術総合研究所で行われている本邦沿岸域の地質・地下構造の理解を目的とした多面的な地質情報集作成の一環として,石狩低地帯及び周辺地域の磁気異常分布の概要を把握するため,既存の空中磁気データを編集して「石狩低地帯及び周辺地域の20万分の1空中磁気図(全磁力異常)」を作成した(大熊・中塚,2014).また,新たに高分解能空中磁気探査を苫小牧地域で実施して,当該地域の詳細な空中磁気異常図を作成した(大熊・中塚,2014).
 まず,対地1,500mの滑らかな高度での空中磁気データ(中塚・大熊,2009)から,図面作成範囲のデータを抽出し,石狩低地帯及び周辺地域の空中磁気図(全磁力異常)を編集した.また,磁気異常分布の説明のために,全磁力異常から極磁力異常への変換を行った.作成した極磁力異常図を参照すると,石狩低地では,北上-石狩磁気ベルトと呼ばれる高磁気異常帯が南北方向に中央を縦断し,地表地質分布(尾崎・小松原,2014)とは対応しない.磁気ベルトは複数の磁気異常の高まりが連続するもので,波長が長いことから磁気異常源の賦存深度が深いことが予想される.この成因については従来諸説あるが,磁気ベルトの近傍で掘削された基礎試錐や石油調査井により,約3,700~4,600mの抗底付近で塩基性の火成岩や花崗岩類が確認され関係が示唆されている.
 そこで,今回,当該地域の地下構造を探るため,磁気異常の3次元イメージング(Nakatsuka and Okuma, 2013)を実施した(Okuma et al., 2014).その結果,石狩低地では地下深部に伏在する南北方向に連続する磁気構造が解析され,北上-石狩磁気ベルトに対応する.解析された磁気構造は北部で浅く(5km)幅が狭く(10km),南部で深く(10km)幅が広い(25km).また,解析された磁化強度は大凡1A/m程度であり,これは磁気構造が苫小牧地域の地下4,600m付近で掘削により確認されている花崗質岩である可能性を示唆している.
 高分解能空中磁気探査の結果,苫小牧地域の沖合では北上-石狩磁気ベルトに対応する南北性の高磁気異常に加えて,北北西-南南東方向の長波長の高磁気異常が重畳し,その南西端部が同方向の海底地形の顕著な段差に対応することが明らかとなり,当該地域の磁性鉱物を含む堆積構造との関係が示唆された.