日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG63] 雪氷圏地震学 - 地球表層環境変動の新指標 -

2015年5月25日(月) 11:00 〜 12:45 102A (1F)

コンビーナ:*金尾 政紀(国立極地研究所)、坪井 誠司(海洋研究開発機構地球情報研究センター)、豊国 源知(東北大学 大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センター)、古本 宗充(名古屋大学大学院環境学研究科)、座長:坪井 誠司(海洋研究開発機構)、金尾 政紀(国立極地研究所)

11:15 〜 11:30

[SCG63-02] アラスカ南部プレート沈み込み帯ウェッジ内の物質循環と氷河作用

*喜岡 新1朝日 博史2Lindsay L. Worthington3Maureen Davies-Walczak4小嶋 孝徳1John M. Jaeger5Sean S. Gulick6Leah LeVay7中村 淳路8須藤 斎9芦 寿一郎1 (1.東大・大気海洋研・海洋底科学、2.Korea Polar Res. Inst., S. Korea、3.Dept. Earth Planet. Sci., UNM, USA、4.Coll. Earth Ocean Atmos. Sci., Oregon State Univ., USA、5.Dept. Geol. Sci., UFL, USA、6.Inst. Geophys., Jackson Sch. Geosci., UT Austin, USA、7.IODP, TAMU, USA、8.東大・大気海洋研・高解像度環境解析、9.名大・環境学・地球環境科学)

キーワード:気候?テクトニクス相互作用, コルディレラ氷床, 氷河作用, テーパーウェッジ, 物質循環, アラスカ湾

気候変動はテクトニックな変動にも影響を及ぼすことがある。アラスカ南部やチリ南部といった、過去に大規模な山岳氷床が発達した亜極域に分布するプレート沈み込み帯では、新生代後期以降、氷床の発達・後退が繰り返されてきた。しかし、亜極域沈み込み帯縁辺でのテクトニクス-氷河相互作用の理解は乏しい。また、アラスカ南部とチリ南部では、他の付加プリズム縁辺では特徴的に見られるようなウェッジのテーパー角とプレート収束速度の相関性から外れている。第四紀の中で、アラスカ南部に発達していたコルディレラ氷床は中期更新世気候変遷期(MPT)において最も拡大したと考えられている。そこで本研究では、MPTにおけるコルディレラ氷床発達に伴う大規模な氷河削剥によって、アラスカ南部縁辺のテーパーウェッジの力学的機構が大きく変化した可能性を検証した。MPTにおける氷床拡大の復元は2次元Shallow-Shelf Approximationで近似し、このときの削剥速度を算出した。また、算出された削剥速度は、IODP第341次航海で得られた詳細な堆積物記録や構造探査の結果と比較した。その結果、MPTにおける氷河作用は、ウェッジ内の長期的な物質循環に大きな影響を及ぼした可能性が示唆された。例えば、氷河性堆積物が厚く堆積したことによりウェッジ全体が引張場となり、ウェッジ内から海底面へガスや流体が排出されやすくなったと考えられる。これは、ウェッジ内の物質循環や流体移動の指標となりうる海底泥火山やメタンハイドレートの存在を示す海底擬似反射面の存在が、アラスカ南部縁辺では欠落していることとリンクしているのであろう。